
梅毒について感染経路や症状、治療方法などを解説。
梅毒とは
梅毒とはTP(トレポネーマ パリダム)という病原体(スピロヘータ)の感染により、全身に障害を及ぼす感染症です。
症状の無い潜伏期と、症状が現れる顕症期が交互にやってきて、症状は現れるごとに深刻化していきます。
梅毒は数十年かけて大変悲惨な症状に進行しますので、早期発見と早期治療が必要な性病です。
戦後直後、昭和20年性病は爆発的に流行しました。しかしペニシリンなどの抗生物質によって、梅毒は急速に減少し、昭和30年代は新しい梅毒の感染はなくなり、潜伏梅毒が残存するのみとなりました。
ところが、昭和40年を中心に、北九州・神戸などの港町が発端となって戦後第2回目の梅毒の流行が日本全国でみられ、第3回目は昭和62年をピークとする流行がみられました。そして、平成25に前年の1.4倍の報告数があり、現在まで年々報告数が上昇しており、第4回目の梅毒流行となっています。
梅毒の原因
梅毒トレポネーマの感染経路は限られていますから、梅毒感染は予防することができます。
HIV同様に梅毒は血液・精液・膣分泌液によって感染するので、日常生活では性行為以外では梅毒に感染する確率は低いでしょう。
性行為におけるコンドームの正しい使用は、梅毒や他の性病予防にとって有効な手段です。

梅毒感染者との無防備なセックスは梅毒に感染する可能性があります。
・コンドームを使わない性交
・オーラルセックス
・性器具の共用

梅毒感染者の血液が傷口や粘膜に触れたり、体内に入れると梅毒に感染する可能性があります。
・梅毒の感染者からの血液・臓器の提供
・注射針の共用(麻薬の回し打ちなど)

梅毒に感染した母親の妊娠・出産時・授乳によって子供に梅毒が感染します。
・子供を望む場合は医師に相談しましょう。
・エイズウイルスの母子感染率を軽減させる方法があります。
〔梅毒トレポネーマの感染経路〕
梅毒(トレポネーマ・パリダム)とは、日本でも古くからある性感染症の一つで、粘膜疹や皮疹を主な症状とし、淋菌感染症と並び高い感染伝達率(およそ30%)を特徴としています。
2010年より、梅毒(トレポネーマ・パリダム)の患者報告数は、毎年増加しており、2013年には患者数が1,000人を超え、2015年には2,000人を突破しました。
梅毒の症状
〔梅毒の初期症状について〕
梅毒に感染した場合、病期は早期梅毒(第1期梅毒・第2期梅毒)と、晩期梅毒(第3期梅毒・第4期梅毒)に分けられます。
梅毒の初期症状として第1期梅毒では侵入部位である感染局所に5㎜から2cm程度のしこり(初期硬結)ができます。
第1期では、そのまま梅毒感染を放置していても2~3週間ほどで一旦症状が消え、約3か月後に第2期の症状が現れます。
第1期 (3週~3ヶ月) |
梅毒感染後、約3週間で、性器、肛門、口など感染した部分に、小豆大~エンドウ豆大の痛みの無い赤いシコリが出来ます。 これは潜在化し、4~6週間で自然に軽快します。 女性ではこの症状に気付かない場合がほとんどです。 |
治療しない限り、第2期に突入
第2期 (3ヶ月~3年) |
全身の皮膚に、赤い斑点がまばらに現れ、丘疹(皮膚から盛り上がったぶつぶつ)や後頭部に脱毛がみられます。 かゆみや痛みがなく、放っておくと症状はまた自然に2~6週間で消えてしまいます。 |
第2期が終わる頃より数週間から数年間にわたる無症状の潜伏期に入るので、皆さん安心してしまいます。
この時期は血液検査のみが梅毒を発見できる方法となります。
第3期 (3年~10年) |
皮膚や内臓にゴム腫(固いしこりやこぶができ、周辺の組織を破壊し、治ると痕が残る)と呼ばれる病変が起こります。 関節炎や手足の感覚の喪失が起こる場合もあり、心臓、血管、脳などに障害が出て、日常生活が営めなくなります。 |
第4期 (10年~) |
脳や心臓に病変ができることがあります。 |
梅毒の治療
梅毒トレポネーマは抗生物質に大変弱いため、梅毒に感染してから1~2ヶ月なら全快します。しかし、治療が遅れるほど全身に病魔が広がりますので、治癒しにくくなります。梅毒の感染を早く発見して適切な治療をしましょう。
梅毒治療の基本はペニシリンの内服です。投与期間は
・第1期梅毒で2~4週間
・第2期梅毒で4~8週間
・第3期梅毒以降は8~12週間
を目安として内服することが一般的です。
梅毒の治療には内服療法と注射療法がありますが、治療効果にほとんど差がないため、現在では内服治療が主となっています。
梅毒の検査
梅毒とはTP(Treponema pallidum:トレポネーマ パリダム)という病原体(スピロヘータ)の感染により、全身の臓器や組織が冒される感染症です。
梅毒を診断するには、病原体を検出する検査のほかに、血清中の病原体に対して産生される抗体(※1)を調べる免疫血清検査があり、一般には後者の抗体検査が用いられています。
① TPの感染によって産生される抗体は、まず脂質抗原に対する自己抗体が4~6週以降に血中に出現します。
これを調べるのが、STS法です。
STS法には、ガラス板法・凝集法・RPRカード法などがあります。
STSは、TP抗体を検出する方法に比べて早い時期に陽性となるため早期診断に適しています。また、治療効果の判定にも適しています。
しかし、生物学的偽陽性反応(※2)を示し、梅毒以外の病気や高齢者で陽性となることがしばしば認められます。
② ①に遅れて梅毒に感染して約3ヵ月後にTPに特異的に反応する免疫抗体が認められるようになります。
それを調べるのが、TP抗原法です。
TP抗原法には、TPを抗原(※3)としたTPHA法(梅毒血球凝集反応)とFTA-ABS法(梅毒蛍光抗体吸収法)、ECLIA法(電気化学発光免疫測定法)が用いられます。
一度陽性となると治療と経過にかかわらず陽性が持続するため治療効果や治癒の判定には使用できません。
このように、両者には良い点と欠点があり、一般的には非特異的なSTS法と特異的なTP抗原を使用する血清反応(主にTPHA)とを組み合わせて実施しています。
日常的には、STS法とTP抗原法の両者の結果によって、判断されています。
■梅毒検査の判断の方法
判 |
STS法 | TP抗原法 | 判 断 |
陰性 | 陰性 | 梅毒ではない(もしくは、ごく初期の梅毒) | |
陰性 | 陽性 | 梅毒治療後の抗体保有者、非常に古い梅毒、地帯現象、歯槽膿漏、 伝染性単核球症などでTP抗原法の擬陽性 |
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陽性 | 陰性 | 初期梅毒、生物学的擬陽性反応 | |
陽性 | 陽性 | 梅毒(早期から晩期、再感染)、梅毒治療後の抗体保有者、その他のスピロヘータ感染症 |
※1.抗体、※3.抗原・・・病原体などの異物(抗原という)が体内に侵入してきたときに、これを撃退するために免疫系でつくられる物質のことを抗体という
※2.生物学的疑陽性反応・・・梅毒以外の病気で、陽性反応が出てしまう事。