GME医学検査研究所

クレアチニンが高い原因と数値を下げる対策とは?
腎機能低下との関係についても解説

血液検査で調べるクレアチニンって何?

クレアチニンとは、筋肉を動かすエネルギーを使った後に出る老廃物です。
今回のコラムでは、クレアチニン値が高い場合の原因と対策について解説します。筋肉量や水分不足との関連、食事やサプリメントの摂取方法など、数値を下げるためにはどうすれば良いのかも合わせて解説しています。


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クレアチニンとは

クレアチニンは、筋肉がエネルギーを生成する過程で生じる代謝産物の一つです。
筋肉にあるクレアチンという物質が分解されるときに生じます。クレアチニンは腎臓を通じて体外に排泄されるため、クレアチニン濃度は腎機能の指標としてよく使われます。

血清クレアチニン値

血液中のクレアチニン濃度を測定したもので、高い場合は腎機能が低下している可能性があります。測定値が低い場合は、筋肉に関わる異常を疑います。

クレアチニンクリアランス

腎臓が血液からクレアチニンをどれだけ効果的に除去しているかを測定する指標です。腎臓のろ過機能(糸球体濾過量)を評価するために使用されます。

クレアチニンの基準値

筋肉量が多い場合、一般的にクレアチニン値は高くなります。よって、女性より男性の方が10〜20%高値になります。
表1:クレアチニン基準値※施設ごとに基準値が異なることがあります。

クレアチニン値が3mg/dLを超えた場合、厚生省透析導入基準に沿って透析の導入が検討されます。
透析導入基準とは、I. 腎機能 II. 臨床症状 III. 日常生活障害度の三項目について評価するもので、三つの合計点が60点以上になると原則透析導入適応となります。[注1]

Ⅰ.腎機能

血清クレアチニン(mg/dL) クレアチニン・クリアランス(mL/分) 点数
8以上 10未満 30
5〜8 10〜20 20
3〜5 20〜30 10

Ⅱ.臨床症状

項目 症状
体液貯留 全身性浮腫
高度の低蛋白血症
肺水腫
体液異常 管理不能の電解質
酸塩基平衡異常
消化器症状 悪心
嘔吐
食思不振
下痢など
循環器症状 重篤な高血圧
心不全
心包炎
神経症状 中枢・末梢神経障害
精神障害
血液異常 高度の貧血症状
出血傾向
視力障害 尿毒症性網膜症
糖尿病性網膜症

上記のうち、3項目以上で高度(30点)、2項目で中等度(20点)、1項目で軽度(10点)

Ⅲ.日常生活障害度

尿毒症症状のため起床できないもの 高度(30点)
日常生活が著しく制限されるもの 中等度(20点)
通勤・通学あるいは家庭内労働が困難となった場合 軽度(10点)

Ⅰ・Ⅱ・Ⅲのそれぞれの点数の合計60点以上の場合は透析導入となります。ただし、年少者(10歳未満)、高齢者(65歳以上)、高度な全身性血管障害を合併する場合については、それぞれ 10点を加算して考慮します。

[表]参考)東京大学 保健センターhttps://www.hc.u-tokyo.ac.jp/checkupresult/explanation/cre/
[注1]参考)厚生科学研究,腎不全医療研究班による慢性腎不全導入基準.1991https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt/42/11/42_11_879/_pdf

クレアチニンが基準値じゃないとどうなる?

◎クレアチニンが高い場合の原因

クレアチニン値が高い場合、その原因はさまざまです。

1.筋肉量とクレアチニン数値の関係

クレアチニンは筋肉で生成される代謝物なので、筋肉量の多いアスリートや男性でクレアチニン値が高めになる傾向があります。筋肉量が少ない高齢者や痩せた人は、同じ腎機能であってもクレアチニン値が低くなります。

2.水分不足とクレアチニン値の関係

脱水症状により体内の水分が不足すると、血液の濃度が高まり、クレアチニン濃度が上昇することがあります。これは一時的なものであり、水分補給を行うことで改善することが多いです。ただし、慢性的な脱水状態が続くと腎臓に負担がかかり、腎機能が悪化する可能性もあります。

原因疾患

急性腎障害

発生する部位で大きく三つに分類されます。
・腎前性:全身性の疾患により腎臓への血流が減少して起こるもの(大量出血、ショック状態、脱水症状、うっ血性心不全、肝硬変など)
・腎性:腎臓自体に原因があり起こるもの(腎動脈血栓症、播種性血管内凝固症候群、急性糸球体腎炎、ループス腎炎、急性尿細管壊死など)
・腎後性:尿管・膀胱・尿道に問題があり起こるもの(尿管・膀胱・尿道の閉塞、骨盤内腫瘍など)

慢性腎臓病

加齢や糖尿病、ストレス、喫煙、肥満、運動不足、慢性糸球体腎炎、高血圧、高脂血症、遺伝、薬剤によるものなど

感染症

尿路感染症、腎盂腎炎、肝炎など

薬物反応

鎮痛剤(非ステロイド系抗炎症薬)、高血圧症治療薬(ACE阻害など)、抗がん剤、抗菌薬、造影剤などの薬剤により、腎臓への血流が減少したり、薬剤毒性による腎細胞の破壊、薬剤の成分による尿路閉塞、アレルギー反応などが起こる

◎クレアチニンが低い場合の原因

1.筋肉量の低下

・加齢
・筋肉減少症(サルコペニア):筋肉量が極端に減少する疾患で、特に高齢者や慢性疾患を持つ人に多く見られます。
・栄養不良:極端な食事制限などでタンパク質摂取量が不足すると、筋肉が減少します。
・長期間の寝たきり状態:筋肉をほとんど使用しない状態が続くと、筋肉量が減少します。

2.特定の疾患

・筋ジストロフィー:筋肉の萎縮によってクレアチニン値が低下します。
・肝硬変や重度の肝炎: クレアチニンは肝臓で生成される前駆体のクレアチンから作られるため、肝機能が低下するとクレアチニン値が低くなることがあります。

3.妊娠

妊娠中は腎臓への血流量が増加するため、クレアチニンが非妊娠時よりも低い値が出ます。これは生理的な変化であり、病的なものではありません。

クレアチニン値が低い場合の対策

筋肉量の減少や栄養不良が原因であれば、適切な栄養摂取と運動が重要です。また、肝臓や他の臓器に関連する問題が疑われる場合は、さらなる検査や治療が必要です。

クレアチニン数値が高い場合の症状とは

クレアチニンが少し高い程度では、特に症状はありません。
年齢にもよりますが2~3㎎/dL程度から以下のような症状が現れます。
・疲労感
・顔や手足の浮腫
・食欲不振
・尿量減少
・夜間頻尿
・息切れ

貧血など腎不全や慢性腎臓病(CKD)など重度に腎機能が障害された場合、意識障害、痙攣やけいれんなどのような、重篤な症状が現れることがあります。

クレアチニン数値を下げる方法

食事療法

クレアチニン値が高いということは、腎臓に負荷がかかっているということです。
腎臓に優しい食事を心がけましょう。
三食バランス良く摂取することが大事ですが、腎臓のためにとくに気をつけることは「減塩」「低タンパク食」「カリウム制限」「高カロリー食」「リン制限」です。

減塩 塩分(ナトリウム)は、体内で水分と結びつくため、血液量が増えます。血液を濾過して老廃物を体外へ排出する腎臓の負荷が増えるため、塩分制限を行います。
低タンパク食 タンパク質は体内で代謝され、「尿素窒素(BUN)」という老廃物が残ります。
摂取するタンパク質が増えると尿素窒素が増え、排泄するために腎臓に負荷がかかります。腎臓の負荷を減らすために低タンパク食が推奨されることがあります。
しかし、タンパク質は人体には必要な栄養素なので、腎臓に負荷がかからない程度のタンパク質摂取は必要です。自己流でのタンパク質制限は危険なので、必ず医師や栄養士と相談して実施してください。
カリウム制限 野菜や果物に多く含まれるカリウムですが、腎臓が弱っているとカリウムの排泄も負担になってきます。カリウムが体内に残り続けると、高カリウム血症となり、致死的な不整脈を引き起こす可能性があります。
高カロリー食 カロリー摂取量が減ると、腎臓の働きを維持するために筋肉が分解されます。筋肉はタンパク質ですので、尿素窒素が生成され、腎臓に負荷をかけることになります。カロリー摂取のためにタンパク質は増やせないので、「糖質」と「脂質」を増やしてカロリーを補給します。
リン制限 腎機能が低下するとリンの排泄ができなくなり、骨が弱くなったり、動脈硬化を引き起こしたりするため、リンの摂取を控える必要があります。

上記のような食事内容を実現させるために、避けるべき食材には以下のようなものがあります。

高ナトリウム食品 ラーメン、うどん、食パン、はんぺん、魚の干物、漬物、味噌汁、醤油、缶詰、スナック菓子など
高タンパク食品 肉類、魚介類、豆類、卵、乳製品など
高カリウム食品 バナナ、納豆、ほうれん草、トマト、里芋、鮭など
高リン食品 ヨーグルト、牛乳、プロセスチーズ、ハム、魚肉ソーセージ、ビール、ワインなど
その他 野菜ジュース、フルーツジュース、スポーツドリンク、糖分の多いものなど

タンパク質やナトリウムなど、人体には欠かせない栄養素でもあるため、上記食材を忌避するのではなく、状態に応じてバランス良く摂取することが大事です。

・野菜は一度茹でることでカリウムを減らすことができます。
・乳製品はリンが多いですが、乳酸菌飲料であればリンは少ないです。
・飲み物であれば、紅茶、麦茶、玄米茶、水はリンの含有量が少ないです。
・アルコールであれば蒸留酒(ブランデー、ウイスキー、焼酎)が良いです。

過度な食事制限は必要な栄養の摂取が妨げられ、結果筋肉を減らして腎機能を低下させ、クレアチニンが生成されることになりかねません。
医師や栄養士の指導の下に食事管理を行ってください。

薬物療法

直接クレアチニン値を下げる薬はありませんが、腎臓を保護し、合併症を予防、腎機能を維持する目的で薬剤が使われることがあります。

ACE阻害薬 血圧を上昇させるアンジオテンシンⅡの生成に必要なアンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害することで、血圧を下げ、腎臓の負荷を軽減します。アンジオテンシンⅡは腎臓の線維化にも関わっており、ACE阻害薬を使うことで腎臓を保護することもできます。
ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬) アンジオテンシンⅡは、アンジオテンシン受容体と結合して作用します。この結合を防ぐことで、血圧低下や腎臓の保護を狙う薬剤です。ACE阻害薬よりも、副作用の空咳が少ないといわれています。
SGLT-2阻害薬 腎臓での糖の再吸収を阻止して、糖を尿に排泄することで血糖値を下げる薬剤です。腎臓を保護する効果もあるといわれています。
ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬 カリウムの排泄を防ぎ、ナトリウムの排泄を促すことで血圧降下、腎臓の保護を期待します。カリウムが排泄されないので高カリウム血症に注意が必要です。

そのほか、腎機能が低下することで起こる合併症に対して薬物治療を行うこともあります。
貧血の薬、脂質の薬、カリウムの薬、ビタミンD製剤、リン吸着薬、重曹など。
薬物治療は医師の指導に従い、自己判断で薬を中断したり、増量したりしないようにすることが重要です。

日常生活で気をつけることは

水分摂取 腎臓の状態によっては水分制限が必要になる場合もあるため、医師の指示に従うことが大切です。
定期的な運動 ウォーキングやヨガなど定期的な運動
アルコールと喫煙の制限 アルコールの過剰摂取や喫煙は腎臓に悪影響を及ぼします。
睡眠 十分な睡眠とストレスの軽減
血液 血糖値や血圧の管理
食事 食生活の改善など

腎臓の機能を保つためには、食事療法、適切な薬物療法、そして健康的な生活習慣が大事です。定期的な医師の診察と検査を受け、個々の状態に応じた治療方針を順守しましょう。

クレアチニン数値の上昇を知るには

自分のクレアチニン数値が気になる場合、どこで検査したらよいのかご紹介します。

病院・クリニック

腎臓病が疑われる症状がある場合は病院・クリニックを受診しましょう。この場合は、内科または腎臓内科、泌尿器科などが受診先となります。

健康診断

現在とくに自覚症状がない場合は、年に一度か二度ある定期健康診断を受けましょう。会社勤めの方は会社の健康診断を、そうではない方は自治体の健康診断になります。
40歳以降の人が受けられる特定検診で、医師が必要と判断した場合に血清クレアチニン検査が実施されます。自治体によっては、必須項目としている場合もあります。自分の住んでいる自治体のサイトなどで調べてみてください。

郵送検査

自宅にいながら検査キットを購入して調べることができます。自分の都合の良いタイミングで実施でき、誰かと対面することなく検査完了できます。
自覚症状のない人の場合は、1(場合によっては2も含む)を除く方法での定期検査が選択できます。定期的にクレアチニンを測定することは、腎臓病予防の意識を高めるだけでなく、腎臓病を早期に発見して治療を開始することで症状の悪化や合併症を防ぐことが可能となります。

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クレアチニンについて
クレアチニンは筋肉量が多かったり水分不足などでも高くなります
腎不全などで重度に腎機能が障害された場合は意識障害などの重篤な症状が現れることがあります
食事や生活習慣などを見直しして正常値を保つように心がけましょう