GME医学検査研究所

GME検査室の検査方法のご紹介|第一回【PCR法】について

GMEの検査室では、どんな方法で検査をしているのでしょう?

性病検査の検査方法には、抗原抗体反応を用いるものや直接顕微鏡で病原体を観察する鏡検法、遺伝子(DNAやRNA)を増幅させて行うPCR法などがあります。
今回はその中からPCR法の基礎知識についてお話したいと思います。


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PCRとは

PCR

PCRとは「ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)」の略称で、DNAやRNAを複製し増幅させる方法のことです。
極微量な検体でも、目的の細菌やウイルス等のDNAやRNAが含まれていれば短時間で複製・増幅し検出することができます。

PCR検査といえば、新型コロナウイルス検査で知られていますが、新型コロナウイルス検査だけでなく、多くの用途で用いられています。医療現場で用いられる以外にも、食品関係や、環境分野など多岐にわたります。
国産アサリとして売られていたものが、大半は外国産だったといったニュースがありましたが、国産か外国産かといった判定にもPCRが用いられています。
また、刑事ドラマでよく観るDNA鑑定の際にも、微量な血液や体液などから犯人を特定するためにPCRが用いられています。

DNAの特性

それでは今回、DNAのPCRについて解説していきますが、それを理解するためにはDNAの特性を知っておく必要があります。

DNAとは「デオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid)」の略称で、デオキシリボースという糖と、リン酸、塩基という三つの成分で構成される高分子で、ヒトの細胞では核の中の染色体にあります。
塩基にはアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類があり、それらの並び方で遺伝子が決定されています。DNAの中ではAとT、GとCが結合し、二本鎖が一組となった二重らせん構造をしています。

DNAの二本鎖は、熱を加えると一本鎖に離れて、冷やすと元の配列に結合する特性があり、その特性を利用することによりPCRを行っています。

PCR法によるDNAの増やし方

それではPCR法によるDNAの増やし方を見ていきましょう。

①熱変性
DNAを加熱(通常95℃程度)することによって、二本鎖を分離させ一本鎖にします。

②アニーリング
徐々に温度を下げていくことにより(通常55℃~65℃)、一本鎖にしたDNA鎖の目的部分に、あらかじめ入れておいたプライマー(増やしたい配列の両端に結合するように作られた合成DNA)が結合します。

③伸長
再び、温度を上げていきます(72℃程度)。
その際、DNAポリメラーゼ(DNAを複製する酵素)が作用し、新たなDNA分子が合成されます。

①~③のサイクルを繰り返すことによって、DNAが2倍、4倍、8倍といったように指数関数的に増加していきます。

PCR法のサイクル


以上のような方法で、目的の細菌やウイルスのDNAを増幅させ検出することによって、それらに感染していないか調べることができます。

細菌を培養しようとすると、24時間程度培養してからどんな細菌なのか同定することになりますが、PCR法を用いれば2~3時間程度で検出することができます。 このようにPCR法を用いれば、微量な検体からでも比較的短時間でDNAを増幅させ検出することが可能です。

しかし、検体採取の時点で適切に検体採取ができていなければ正確な結果を得ることはできません。精確な結果を得るためにも郵送検査などで、御自身で検体を自己採取する場合は、よく説明書等を読み、適切に検体を採取するように心がけて下さい。

PCR法のまとめ