- ①TP抗体検査は梅毒トレポネーマに対する抗体の有無を調べる
- ②梅毒トレポネーマに対する抗体は体に残り続ける
- ③RPR検査は脂質抗原に対する抗体を調べる
- ④2段階の検査で治療を必要としている梅毒に感染しているかが分かる
梅毒の診断には血液検査が必須であり、TP抗体検査(トレポネーマ抗体検査)とRPR検査を組み合わせて行うのが一般的です。本記事では、梅毒の臨床的特徴に触れつつ、検査方法について解説し、さらに医療機関での受診から自宅で利用できる郵送検査キットまで幅広く紹介します。不安を抱える方や過去感染歴がある方にとって、信頼できる検査の選択に役立つ内容です。
梅毒の基礎知識
◎梅毒の原因菌について
梅毒は梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)を病原体とする感染症です。
治療せずに放置すると、やがて全身に広がり神経障害や心血管障害を起こします。
◎梅毒の感染経路
梅毒の感染経路は以下の通りです。
(1)性行為
オーラルセックスやアナルセックスも含みます。
口に病変部がある場合は唾液にも注意が必要です。
(2)血液感染
輸血、臓器提供、注射針の共用。
(3)母子感染
母体が梅毒に感染していると胎盤を通して胎児へ感染します。
輸血、臓器提供、妊娠の際は梅毒検査を行うことになっており、また、現在では医療機関での注射針の共用はありませんので、性行為によって感染することがほとんどです。
◎梅毒の症状
梅毒は症状がない時期を挟んで4期に分かれます。
症状が消失しても体内では次の段階へと進んでおり、重症化していきます。
| 経過期間 | 症状 | |
| 第1期 | 3週~3ヶ月 | 陰部、口唇部、口腔内などにしこり(初期硬結)ができる その後、表面が崩れて潰瘍になる(硬性下疳) しこり、潰瘍には痛みがないことが多い 太ももの付け根のリンパ節が腫れる 数週間で症状が消失する |
| 第2期 | 3ヶ月~3年 | 全身、手のひら、足の裏に赤い発疹がでる 肛門や外陰部に扁平状のイボ(腫瘤)ができる のどの潰瘍・腫脹・発赤、脱毛、発熱、倦怠感、リンパ節がが腫れるなど 数週間で症状が消失、再発を繰り返しながら3期、4期へ |
| 第3期 | 3年~10年 | 皮膚や骨などにゴムのような腫瘍ができる |
| 第4期 | 10年以上 | 心臓、脳血管、神経、骨などに病変が広がり、障害が現れる 最終的に死に至る |
※現在では第3期、第4期まで症状が進むことはほとんどありません。[注1]
梅毒の検査の種類
◎TP抗体検査(梅毒トレポネーマ抗体検査)
梅毒に感染すると、体内で梅毒に対する抗体が作られます。この「梅毒トレポネーマに対する抗体」の有無を調べる検査になります。
梅毒に特異的な検査で、梅毒以外で陽性になることはほとんどありません。
抗体が作られるまでは少し時間がかかりますので、感染したと思われるタイミングから4週間〜6週間ほど経過しないと、梅毒に感染しているのに陰性の結果が出る可能性があります(これを偽陰性といいます)。
この抗体は体に残り続けますので、治療を完了しても検査結果は陽性のままです。
TPHA、TPPA、TPLA、TP抗体、FTA-ABSなど検査方法によって様々な呼び方がありますが、どれも梅毒トレポネーマ抗体を調べる検査になります。[注2]
◎RPR検査(非トレポネーマ抗体検査)
梅毒に感染すると、「脂質抗原に対する抗体」も作られます。
この抗体は梅毒の活動性の指標となり、検査で陽性になると「梅毒が活動期である」という解釈になり、治療が必要となります。治療をすれば抗体価は下がり、多くの場合は陰性化します。
「脂質抗原に対する抗体」は梅毒に特有のものではなく(なので非トレポネーマ抗体検査といいます)、関節リウマチや全身性エリテマトーデス、肝疾患などでも陽性になることがあり、これを生物学的偽陽性(BFP)といいます。
脂質抗原に対する抗体は、感染したと思われるタイミングから2週間〜4週間で検出することができ、梅毒トレポネーマ抗体検査より早期に陽性となる傾向にあります。
◎なぜTP抗体と検査RPR検査の組み合わせが必要?
TP抗体検査は梅毒に特異的ですが、一度梅毒に罹患していると治療が完了していても陽性判定となることがあります。
RPR検査は現在梅毒に感染しているかの指標になりますが、です。
治療を必要としている梅毒に感染しているかどうかは、二つの検査の結果と臨床所見を考慮して総合的に判定されます。
TP抗体検査とRPR検査の結果の組み合わせの解釈は以下の通りです。
| TP抗体検査 | RPR検査 | 結果判定の解釈 |
| 陰性(-) | 陰性(-) | 1)梅毒感染はない 2)梅毒感染ごく初期の可能性あり、感染の疑いがある場合には期間をあけて再び検査を行う |
| 陰性(-) | 陽性(+) | 1)梅毒感染の初期、期間をあけて再びTP抗体検査を実施して陽性反応を確認する 2)生物学的偽陽性(BFP)の可能性 |
| 陽性(+) | 陽性(+) | 1)梅毒感染(未治療) 2)梅毒治療中 3)梅毒治療後まもない抗体保有者 |
| 陽性(+) | 陰性(-) | 1)梅毒治療後の抗体保有者 2)TP抗体検査での偽陽性反応、医療機関に受診し、診察を受ける |
どのような人に梅毒検査が必要?どちらの検査を受けるべき?
◎梅毒を疑う症状がある場合
・性器や口唇、口腔にしこりがある
・性器や口唇、口腔に潰瘍がある
・全身、手のひら、足の裏に赤い発疹がでている
・太ももの付け根のリンパ節にしこりがある
・のどが痛い、腫れている
過去3か月以内に感染リスク行為があり、上記のような症状がでた場合には梅毒を疑います。
◎感染リスクのある行為歴がある場合
・パートナーが梅毒に感染した
・新しいパートナーと性行為があった
・不特定多数の人と性行為があった
性行為があれば「感染リスク行為がある」に当たりますが、上記に当てはまる場合には特に注意が必要です。
梅毒は感染してから症状が出るまでに時間がかかり、症状が消える期間もあります。
知らない間に感染している可能性はありますので、感染リスクのある行為があった場合には検査を受けましょう。
パートナーが梅毒に感染した場合には、病院に受診しましょう。
◎妊婦健診
妊娠すると、妊娠初期の血液検査で梅毒を含めた感染症検査を行います。梅毒に感染している場合、早急な治療が必要となります。
妊娠していると治療方法が変わり、専門的な知識が必要となりますので、必ず病院で医師の診察を受けましょう。
◎既往歴のある方の確認
既往歴のある方の場合はTP抗体検査の陽性判定が残り続けますので、再感染を見つけるためには2つの検査どちらも行う必要があります。定期的に検査を受けて、再感染を見逃さないようにしましょう。
日本性感染症学会のガイドラインでは、梅毒治療後1年ほど経過をみることを推奨していますので、その間は病院に受診して経過を見るとよいでしょう。[注3]
梅毒検査を受ける時期と方法
◎感染からどれくらいで検査可能か
感染したと思われる機会から抗体が検出できるようになるまで、TP抗体検査は4〜6週間、RPRは2〜4週間ですので、4週間を過ぎれば検査は可能といえます。
しかし、抗体ができるまでの時間は個人差が大きく、4週間を過ぎたから必ず検出できるとは限りませんので注意が必要です。
TP抗体も検出できるようになる感染から2〜3ヵ月過ぎた頃に検査すると良いでしょう。
梅毒を疑う症状が出ている場合には、検査時期より早くても病院へ受診して医師の診察を受けるようにしましょう。
◎医療機関での検査
婦人科や泌尿器科などでは採血をして血液検査を行います。病院で検査を行う場合にはTP抗体検査・RPR検査両方を実施することがほとんどです。
受診する病院・クリニックや症状にも寄りますが、保険適用で3割負担の場合、検査を含めて初診で2000円〜5000円程度のことが多いようです。
保険適用できるのは、症状がある、パートナーが感染したなど治療が必要と認められた場合です。
「症状はないけど、検査をしたい」という場合は、自由診療になりますので、費用は全額負担になり、これも病院・クリニックによって金額は異なります。また、保険診療で治療する場合、匿名にはできません。
◎郵送検査キットの活用
梅毒は郵送検査キットで検査することができます。
郵送検査キットでは、ランセットにより指先で採血をして血液検査を行います。検査申し込み、検体採取、結果の確認まで病院にいかず、自宅で完結することが可能で、匿名で検査をうけることができる検査会社もあります。
また、梅毒だけでなく他の性感染症検査とセットになった検査キットを販売していることもあり、まとめて性感染症検査を受けることができるメリットがあります。
梅毒の診断にはTP抗体検査とRPR検査の二つの検査結果が重要になってきますので、検査キット購入の際には、TP抗体検査のみのものよりも、TP抗体検査とRPR検査の2段階で検査できるものの方がおすすめです。
2段階検査をしている梅毒検査キットはこちら
誰かに知られたくない、忙しいので病院に受診する時間がないという方は、郵送検査キットを活用してみてはいかがでしょうか。
TP抗体検査とRPR検査を組み合わせて行うことで現在治療が必要な梅毒感染かどうかがわかります

