GME医学検査研究所

GME検査室の検査方法のご紹介|第二回【免疫学的測定方法】について

今やなくてはならない検査法、イムノアッセイについて

前回の検査方法についてのご紹介では、遺伝子学的検査の【PCR法】の基礎知識についてお話しました。 今回は、抗原抗体反応を用いる免疫学的測定方法(Immunoassay:イムノアッセイ)の基礎知識についてお話します。


Tweet

免疫学的測定法とは

免疫学的測定法(Immunoassay:イムノアッセイ)とは、抗体に抗原を認識させる抗原抗体反応を利用した測定方法です。イムノアッセイで用いる抗原抗体反応は、特異度(※1)や感度(※2)が極めて高い測定方法となっています。

イムノアッセイは医療の分野で多く用いられていますが、食品中の卵や小麦といったアレルギー表示が必要な原材料が含まれていないかといった検査や残留農薬の検査などにも用いられています。
また、最近では新型コロナウイルスの抗体検査でも用いられているので聞いたことがあるかと思います。

(※1) 特異度:陰性を正しく陰性と判断する割合 特異度が高いと偽陽性が少ない
(※2) 感度 :陽性を正しく陽性と判断する割合 感度が高いと偽陰性が少ない

抗原抗体反応について

抗体(antibody)とは、細菌やウイルスといった異物である抗原(antigen)が体内に入ることにより免疫反応を起こし形成される免疫グロブリンと言われるタンパク質で、免疫機能に欠かせない働きをしています。

主に5つのクラスに分類(IgM、IgG、 IgA、IgD、IgE)されています。
イムノアッセイでは主にIgGが用いられており、IgGは2本の重鎖(H鎖)と2本の軽鎖(L鎖)で構成されています。
H鎖とL鎖はそれぞれ定常部(C 領域)、可変部(V 領域)に区分され、化学構造上の微妙な違い(官能基の位置、立体配置、種類)を認識し、抗原と特異的に結合します。この抗原抗体反応を用いて対象となる抗体あるいは抗原の測定を行います。

抗原を測定する場合は、マウスやモルモット、ヤギなどに免疫して得られたモノクローナル抗体やポリクローナル抗体を使用します。抗体を測定する場合は、精製抗原、リコンビナント抗原、合成ペプチド抗原などを使用します。

性病検査に用いられる主な免疫学的測定法について

イムノアッセイには多くの種類があり、それぞれの検査対象に合った方法が用いられています。それでは、その中からいくつか紹介します。

  • 凝集法(HA、PA、LA)

    検体中の抗体(あるいは抗原)と試薬中の抗原(あるいは抗体)を反応させ、分析装置や目視によって凝集を観察する方法。赤血球を用いた赤血球凝集法(HA)、ゼラチン粒子などを用いた粒子凝集法(PA)、ラテックス粒子を用いたラテックス凝集法(LA)などがあります。

  • 化学発光酵素免疫測定法CLEIA
    (Chemiluminescent enzyme immunoassay)

    検体中の抗体(あるいは抗原)とビーズや磁性粒子などに固相化した抗原(あるいは抗体)を反応させた後、酵素標識した抗体(あるいは抗原)に2次反応させ、化学発光基質を加えて発光強度を測定する方法。

  • 化学発光免疫測定法CLIA
    (Chemiluminescent immunoassay)

    磁性粒子などに固相化した抗体(あるいは抗原)に対して抗原(あるいは抗体)を反応させた後、化学発光性物質で標識した抗体(あるいは抗原)に2次反応させ、化学発光性物質の発光強度を測定する方法。

  • 電気化学発光免疫測定法ECLIA
    (Electro chemiluminescence immunoassay)

    抗体(あるいは抗原)を結合したビーズを用いて抗原(あるいは抗体)と反応させた後、ルテニウムピリジン錯体で標識した抗体(あるいは抗原)を2次反応させ、電気化学反応によりルテニウムピリジン錯体の発光強度を測定する方法。
    ※GMEの検査に用いる検査法

  • 酵素免疫測定法EIA
    (Enzyme immunoassay)

    標識物質に酵素で標識した抗原または抗体を用いて抗原抗体反応を行い、発色基質を加えて酵素活性を測定する方法。

  • 酵素免疫測定法ELISA
    (Enzyme-Linked immunosorbent assay)

    固相化した抗体に対して抗原を反応させた後、酵素標識した抗体を抗原2次反応させ、発色基質を加えて酵素活性を測定する方法。

免疫学的測定法の偽陽性・偽陰性について

イムノアッセイは感度と特異度が極めて高い測定方法ではありますが、非特異反応がおきてしまう場合があります。
非特異反応には偽陽性(本当は陰性なのに陽性に見えてしまう反応)偽陰性(本当は陽性なのに陰性に見えてしまう反応)があります。

非特異的反応の主な要因としてはFc受容体、異好抗体、リウマトイド因子、二次抗体の非特異的反応などがあります。 よく知られている非特異的反応として、異好抗体であるヒト抗マウス抗体(human anti mouse antibody:HAMA)があります。
イムノアッセイに用いられる試薬がマウス由来の抗体の場合、ヒト抗マウス抗体と結合し非特異的反応を示す場合があります。マウス以外にもヤギ、ヒツジ、ウサギ由来のものも確認されています。
また、ヒトの血液中に自己抗体というヒトの抗体に対する抗体がつくられる場合があります。
関節リウマチ患者にみられるリウマトイド因子(RF)が有名で、本来はヒト抗体のFc部に対する自己抗体ですが、異種抗体に結合してしまうため、非特異的反応の原因となってしまいます。RFは健常人でも数%は高値を示し、高齢者ほど高くなっていきます。

以上の要因から、ごく稀(0.3%前後)に非特異的反応により偽陽性・偽陰性となってしまう場合があります。そのため疑わしい結果が得られた場合は、異なる検査方法で再検査を行い、各検査結果の解析を行う必要があります。

免疫学的測定方法のまとめ

この様に免疫学的測定法は多くの種類があり、各種検査を行う上ではなくてはならない検査方法です。
また感度・特異度ともに極めて高い検査方法ではあるものの、非特異的反応もあるため、性病検査の際に、「自覚症状も無いし、感染する機会もなかったのに結果が陽性だった」などといった場合は非特異的反応の可能性もあることを覚えていていただければと思います。

免疫学的測定方法のポイント