GME医学検査研究所

外陰炎とは?その症状や主な原因・予防法を分かりやすく解説

女性を悩ませるデリケートゾーンの痒み

これは何らかの原因によって、外陰炎になっている状態です。おもに外陰部の痒みのほか、腫れや痛み、または腟炎と合併しているケースが多いとされています。外陰炎はケースによって症状や原因が複数想定されるのが特徴です。
今回は外陰炎について、症状や想定される原因、そして予防法をそれぞれ分かりやすく解説いたします。


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外陰炎はどんな症状がある?

外陰炎の症状は人によってさまざまです。多くのケースで、外陰部の皮膚に赤みが見られます。また、場合によってはただれているようにも見えることもあるでしょう。

皮膚の赤みに次いで見られるのが、痒みと痛みです。痒さは、外陰炎になった原因や重症度によって異なります。少し痒さを感じる程度で済む場合もあれば、日常生活に支障をきたすほど悪化するケースがあります。

外陰炎によって、皮膚の表面がもろくなります。
加えて、激しい痒さに我慢できず、自然と掻いてしまうことがあるでしょう。もろくなった外陰炎の部分をかいてしまうと、患部に細かな傷ができてしまいます。
この傷が原因となって、皮膚のバリア機能が阻害されます。皮膚を守ることができなくなるので、炎症が益々悪化し、原因となった微生物が皮膚の奥のほうまで侵入してしまうかもしれません。

また、傷口から少ない出血が見られることもあります。
さらに、外陰炎と合併して腟炎を発症しているケースは珍しくありません。膣腟炎を併発していると、外陰炎で見られる症状のほかにオリモノの質や量、匂いの変化などの別の症状も見られるようです。

外陰炎の主な原因とは?

外陰炎の原因は、大きく2種類に分類できます。

1.感染性外陰皮膚炎

感染源を原因とする外陰炎が、感染性外陰皮膚炎です。
外陰炎の原因となる感染源は1つではなく、さまざまな細菌やウイルスなどが想定されます。また、毛包に炎症が見られる場合は外陰毛嚢炎とも呼ばれます。

カビの仲間であるカンジダや大腸菌といった細菌、ヘルペスのようなウイルスが外陰炎の原因となる感染源です。これら細菌やウイルスのほかに、毛じらみやトリコモナスなど微生物が感染源となっているケースもあります。
細菌やウイルスが原因で外陰部に症状が見られるので、性行為が原因だと思われることが多いかもしれません。確かに、パートナーとの性行為によって感染してしまう性感染症としての側面を持ってはいます。

しかし、一概に性感染症と断言できるわけではありません。性行為が原因となる場合のほか、免疫力が低下してしまったために、もともと体内に住んでいた細菌が活性化され、外陰炎が発症するケースがあります。
よって、免疫力を下げてしまう要因も外陰炎の原因として含められます。
副腎皮質ステロイド剤を使っていたり、糖尿病を合併していたりするケースが原因として考えられるでしょう。ほかにも、抗がん剤や免疫抑制剤を使っている場合も、免疫力の低下につながります。

外陰部は、膣の分泌液によって酸性の成分が多い環境となっているので、細菌やウイルスといった外陰炎の感染源が感染しにくい状態となっているのが一般的です。
しかし更年期や閉経期を迎えると、女性ホルモンの分泌量が低くなってしまうので膣の分泌液が少なくなります。
高齢化にともなって外陰炎になりやすくなることもあるでしょう。



2.非感染性外陰炎

感染性外陰皮膚炎に分類できないような細菌やウイルス、などの微生物が原因ではない外陰炎が非感染性外陰炎です。接触性外陰炎ともよばれます。
「接触性」というように、ナプキンやおりものシートが触れて皮膚に刺激を与えてしまったために起きてしまうような外陰炎です。

月経血や石鹸が原因となる場合、通気性に優れていない下着を使用していたためにかぶれや細かな傷ができて外陰炎となる場合など、ケースによってさまざまです。 また、閉経を迎えると女性ホルモンの分泌量が低くなってしまうので、外陰部や腟の皮膚が薄くなり、腟分泌液の分泌量が低下する萎縮性外陰炎が起こることがあります。
この場合も、外陰部のかゆみや黄色いおりものや悪臭、出血、性交痛などの症状があります。

この他に、外陰がんでも外陰部のかゆみや痛み、腫瘤、出血、色素沈着などの症状が出ることがあります。
非感染性外陰炎は、細菌やウイルスなどの微生物が原因ではないため、抗生物質の使用による治療ができません。症状が軽い段階で何が原因なのかを分析し、主に生活習慣の改善によって治療を試みます。

外陰炎の予防方法

外陰炎の予防にはとにかく清潔な状態を保つことが大切です。通気性のよい下着を着用するなど、外陰部周辺が蒸れてしまわないようにしましょう。
そのほか、接触性外陰炎を予防するために、外陰部に直接擦れたり締め付けたりするような下着あるいはパンツは避けるべきです。自分の体格に最適な下着やパンツを着用するようにしましょう。
清潔な状態を保つために生理中はナプキンを適度に交換したり、入浴の際には粘膜を傷つけてしまわないように心がけて洗ったりすることも重要です。

このように外陰部を清潔に保ち蒸れないように心がけておけば、外陰炎は十分に予防することが可能です。加えてもし外陰炎の症状が見られたとしても、軽度であれば過度に掻きむしって悪化させない限り、上記の予防策を徹底することで改善は見られます。
過度に掻いてしまったり症状がなかなか改善されなかったりする場合は、迷わずクリニックに相談しましょう。

外陰炎の検査・治療法

外陰炎をクリニックで検査してもらう場合、保険適用で3割負担であればおよそ3,000〜5,000円で診てもらえます。治療の際には別途で薬代が発生します。
婦人科または性病科にご相談ください。

外陰炎の検査はまず内診によって行われます。外陰部を確認するだけで外陰炎の症状の深刻さはある程度診ることが可能です。
炎症の度合いや水疱、潰瘍、出血などを確認します。 必要に応じて内診を行った後に患部から検体を採取して、細菌検査やウイルス検査を行います。一般的な外陰炎であれば患部を綿棒などで擦るだけで採取が可能です。
併せて腟炎の症状が見られる場合、おりものの検査も行う場合があります。加えて悪性疾患の恐れを踏まえて細胞診検査を実施することもあるでしょう。
細胞診検査は細菌検査やウイルス検査などのように患部から細胞を採取し、そして顕微鏡で見てがん細胞の有無を確認します。
原因を特定できたら最適な方法で治療を開始します。

【外陰炎は原因によって治療法が異なる】
外陰炎にはさまざまな原因が想定されます。似たような症状が見られますが原因によって対処法が異なるため、治療法も変わってきます。
感染性外陰皮膚炎の原因として多い微生物に対しては、軟膏やクリームといった直接患部に塗布する外用薬によって治療を行います。腟炎を併発している際は、腟錠を使用するケースもあるでしょう。

そのほか特定の原因に対しては治療薬以外に生活習慣の改善などで治療を行うケースもあります。 例えばカビの仲間であるカンジダが原因の外陰炎の場合、外陰部を清潔な状態に保ち、刺激性石鹸を使わないようにするといった生活習慣の改善が治療に効果的です。
また毛じらみが原因の外陰炎は、外陰部周辺の陰毛を剃ることで治療を試みます。併せて毛じらみに効果的なシャンプーやパウダーを使用します。

萎縮性腟炎の場合には、女性ホルモンの投与により改善します。

感染性外陰皮膚炎の2つの原因

感染性外陰皮膚炎は細菌やウイルスなどの微生物の感染により起こります。
原因として主に挙げられる2つの原因について、それぞれの症状や治療法の違いなどを踏まえて詳しくみていきましょう。

  • 1.腟カンジダ

    腟内に住んでいる病原体が増えてしまったために、発症してしまうのが腟カンジダです。厳密にはカビの仲間なので細菌ではありません。

    症状がない場合でも、およそ10人に1人の割合で腟内に常在しているとされており、単にカンジダが存在しているだけではカンジダ症とはならず治療の必要はありません。
    外陰部のかゆみなどの症状が出ている場合のみ治療の対象となります。

    発症は抗生物質の服用など何らかの原因によりカンジダが異常増殖することにより起こると考えられています。感染性外陰皮膚炎のなかでは、比較的多く報告されている部類に入ります。
    症状としては主に痒みを感じるでしょう。また、おりものがヨーグルトのように白濁してポロポロとした状態になるのが特徴です。
    治療は専用の薬剤を腟内に入れて行います。そのほか昨今では経口剤による治療法も登場しています。ですが腟洗浄と腟座薬による治療が基本的です。

    性行為によってパートナーに感染する恐れがあるので、性感染症の1つとしても分類されますが、日和見感染症としても考えることができます。

  • 2.性器ヘルペス

    単純ヘルペスウイルスが原因となって発症する外陰炎です。
    性器ヘルペスは発熱することがあり、感染部位にかゆみや痛みなどの症状が現れます。次第に水泡が出てきて、それが破れると潰瘍になります。その為、激しい痛みを感じます。痛みが強い場合は、排尿や歩行が困難になる例もあります。場合によっては神経麻痺によって尿が出なくなるケースもあります。

    また、性器ヘルペスの特徴として、症状が再発する点が挙げられます。再発の場合は初感染の時ほどひどい症状にはなりません。
    治療するためには抗ヘルペス薬が使用されます。そのほか軟膏による治療も可能です。
    性感染症に分類されますので性行為によって感染する恐れがあります。

外陰炎かも?と思ったら迷わずクリニックへ

外陰炎の症状は人によって軽度なこともあれば、深刻すぎて日常生活に支障をきたす場合があります。
軽度なものであれば、外陰部周辺の環境を清潔に保つなどによって改善は可能ですが、無意識のうちに掻いてしまったり、蒸れてしまったりすることで悪化するかもしれません。また、パートナーに感染させてしまうかもしれません。
お困りの際は、速やかにクリニックで見てもらうようにしましょう。
クリニックに行く時間がない、抵抗があるというという人はご自宅で出来る郵送検査を選択してみるのはいかがでしょう。