GME医学検査研究所

細菌性腟症の症状とは?その原因や予防方法を詳しく解説

女性が気を付けたい病気のひとつに、細菌性腟症があります

細菌性腟症にかかる女性の約半数は無症状ですが、再発しやすい上、重篤な合併症を引き起こすリスクがあるため、早めに治療することが大切です。
今回は、細菌性腟症の主な症状や原因、治療法、予防法について解説します。


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腟内の細菌バランスが関係

細菌性腟症とは、微生物のはたらきによって発症する腟感染症の一種です。
腟の中にはもともとたくさんの常在菌が存在していますが、何らかの理由によって腟内の細菌バランスが崩れると、腟感染症を発症します。
細菌性腟症の感染率は国や地域にかかわらず高い傾向にあり、地域全体では23~29%の女性が細菌性腟症に感染しています。[注1]
また、一度治っても再発しやすい性病としても知られているため、日頃から意識的に予防することが大切です。

[注1]High Global Burden and Costs of Bacterial Vaginosis: A Systematic Review and Meta-Analysishttps://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30624309/

細菌性腟症の主な症状

細菌性腟症を発症すると、灰色または白色のサラサラとしたおりものが分泌されるようになります。
おりものが生臭い匂いがするのも特徴で、特に月経中や性交後は匂いが強くなる傾向にあります。ただ、かゆみなどの症状を伴うことはまれで、かつ罹患した女性の半数は無症状であることから、細菌性腟症の発症に気付かない人も少なくありません
そのため、細菌性腟症に罹患しても放置されるケースが多々ありますが、人によっては骨盤内炎症性疾患と呼ばれる重篤な合併症を引き起こす要因となることがあります。
骨盤内炎症性疾患に罹患すると、下腹部痛や発熱、吐き気などの症状に見舞われるほか、卵管の閉塞、腹膜炎などの重篤な合併症を引き起こす原因となるため、細菌性腟症は早期発見・早期治療することが重要です。
また、妊娠中の女性が細菌性腟症を発症すると、胎児を包んでいる羊膜が感染症を引き起こすリスクがあるほか、早産や分娩後および流産後の子宮感染症などの原因となる場合があります。

細菌性腟症の主な原因

細菌性腟症の根本原因は、腟内に存在する常在菌が過剰に繁殖し、細菌バランスが崩れてしまうことにあります。[注2]
腟内には多種多様な細菌が存在していますが、そのうち75~95%を占めるのが乳酸桿菌と呼ばれる細菌です。 乳酸桿菌はグリコーゲンを分解して乳酸を生み出すことで、腟内をpH4.5以下の適度な酸性に保っており、感染症の原因となる雑菌の侵入をふせぐ役割を担っています。
しかし、何らかの理由で乳酸桿菌の数が減少すると、腟内の細菌バランスが崩れ、感染症を引き起こす原因となるガルドネレラ・ヴァギナリスやペプトストレプトコッカスといった常在菌が異常繁殖し、細菌性腟症を引き起こします。
細菌性腟症のくわしいメカニズムは未だに全容解明されていませんが、以下3つのケースに該当する人は細菌性腟症のリスクが高くなるといわれています。

  • ① 性行為

    細菌性腟症は性行為の有無に関係なく発症する疾患ですが、不特定多数の人と性交をすると、発症リスクが上がるといわれています。
    その理由として、アルカリ性の精液によって腟内のpHバランスが変化する可能性があること。自身の外陰部にある雑菌が性行為によって腟内に侵入することなどが挙げられます。
    同様に、汚い手で陰部に触れたり、常在菌の多い口を使ったオーラルセックスを行ったりすると、細菌性腟症にかかりやすいといわれています。

  • ② 陰部の過度な洗浄

    腟を過度に洗いすぎると、乳酸桿菌も殺菌されてしまい、細菌性腟症のリスクが高くなります。
    特に細菌性腟症にかかると、おりものの状態が変化したり、陰部の匂いが強くなったりするので、陰部を過剰に洗う人が多いのですが、細菌性腟症の対策としては逆効果になりますので要注意です。

  • ③ 喫煙の習慣

    日常的にタバコを吸う習慣のある女性は、細菌性腟症にかかる確率が高くなるという報告もあります。
    詳しいメカニズムや因果関係はわかっていませんが、一説によると、タバコの煙に含まれるベンゾピレン化合物によって乳酸桿菌が破壊されることが主な要因のようです。

[注2]日本性感染症学会:日本性感染症学会誌 性感染症 診断・治療 ガイドライン2016 http://jssti.umin.jp/pdf/guideline-2016.pdf

細菌性腟症の診断方法

細菌性腟症に罹患しているかどうか診断する方法は、医師による評価と内診です。
まずは、医師による評価を行います。灰色または白色のおりものが出る、おりものに悪臭がするといった症状が出ている場合は、細菌性腟症を疑い、最近の行動や性行為について質問し、原因を絞り込んでいきます。 問診の結果、性病の疑いが濃厚と判断された場合は、内診を行います。
おりものなどの分泌物のサンプルを採取し、顕微鏡で調べて原因となる微生物を特定します。ただ、病原菌がはっきりしているトリコモナス腟炎や真菌感染症(カンジダ症)とは異なり、細菌性腟症は乳酸桿菌の現象にともなう好気性菌または嫌気性菌の異常繁殖によって発症するため、原因菌を特定することはできません。
そのため、トリコモナス菌やカンジダ真菌などが検出されず、かつ腟内のpHが5.0以上の場合は、医師の評価と合わせて細菌性腟症と診断されるのが一般的です。

他の性病と区別するためにも、適切な検査が必要

細菌性腟症の主な症状である「灰色・白色おりもの」や「おりものの悪臭」は、クラミジアや淋菌といった他の性病と類似する部分があります。
そのため、セルフ診断では細菌性腟症なのか、それ以外の疾患なのか正確に判断するのは困難です。
最近は性病の原因菌を除菌する薬をインターネット通販などで購入する人が増えてきていますが、特定の病原菌が原因で発症するクラミジアや淋菌と、乳酸桿菌の減少が主な要因である細菌性腟症では、根本的な治療法に違いがあります。
誤った自己判断を下し、ネットなどで手に入れた治療薬を使用すると、いつまで経っても症状が治まらないのはもちろん、場合によっては症状が悪化する原因となることもあります。
そもそも、インターネットで購入できる治療薬の中には偽物も少なくありませんので、安全に治療したいのなら、適切な検査を行った上で、正しい治療を受けることが大切です。

細菌性腟症の治療法

細菌性腟症の治療方法には「局所療法」と「内服療法」の2パターンがあります。
ここでは、それぞれの治療法の特徴をご紹介します。

■局所療法

抗菌薬の一種であるメトロニダゾールまたはクリンダマイシンの錠剤を腟内に直接投与する方法です。
メトロニダゾールとクリンダマイシンは、いずれも米国疾病予防管理センターの性感染症治療ガイドラインで推奨されている治療薬で、腟内を正常に保つために必要な乳酸桿菌には影響を与えず、その他常在菌のみを効率よく除菌することができます。[注3]
一般的に、1日1回の投与を7~10日間ほど続けると、症状が緩和し、快方に向かいます。
ただ、腟剤は腟内の奥深くまで入れる必要があるため、自宅でセルフケアするのは困難です。 そのため、腟剤を用いる場合は原則として毎日通院する必要があります。

■内服療法

メトロニダゾールの錠剤を内服して治す方法です。
腟剤とは異なり、自宅で服用することができるため、毎日病院に通うのは難しいという方におすすめの治療法です。
ただ、内服薬のほうが全身に副作用が現れやすく、時として食欲不振や胃部不快感、吐き気などの症状が見られる場合があります。また、妊娠中の女性には適さないので、腟剤を使った局所療法を用いるのが一般的です。

[注3]厚生労働省:医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議 公知申請への該当性に係る報告書(案)メトロニダゾール細菌性腟症の効能追加 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001gob9-att/2r9852000001gok5.pdf

細菌性腟症の予防法

細菌性腟症は、先に紹介した局所療法および内服療法を続ければ、数日ほどで症状が収まります。 ただ、細菌性腟症は再発しやすく、同じような生活を送っていると二度、三度と罹患する可能性があります。
また、細菌性腟症は無症状のまま経過することも多い病気ながら、重篤な合併症を引き起こすリスクがありますので、普段から予防に励むことが大切です。
ここでは、細菌性腟症を未然に防ぐための対策を3つご紹介します。

① 雑菌が入るような性行為を避ける
性行為を行う際は、雑菌が入るような行動を避けることが大切です。
汚い手で腟に触れたり、口腔内が汚れたままオーラルセックスを行ったりすると発症リスクが高まりますので、性行為を行うときは事前に男性側が手洗い、歯磨きなどを徹底しましょう。
また、妊娠を希望しない場合は、必ずコンドームを使用し、アルカリ性の精液が腟内に入らないよう配慮することも大切です。 他にも、不特定多数の人と性行為を持たないなど、セックスの在り方を見直すことで、細菌性腟症のリスクを低減させることができます。

②腟は適度な洗浄を心がける
腟を洗浄しすぎると乳酸桿菌の減少につながりますので、ボディソープなどを使ってごしごし洗うのはNGです。
もともと腟内は乳酸桿菌のはたらきによって衛生的に保たれていますので、過度な洗浄は必要なく、生理中や性行為の前後などにぬるま湯で洗浄するだけで十分です。
細菌性腟症になると匂いのあるおりものが増えるので、気になってつい洗いすぎてしまう方が多いのですが、かえって逆効果になりますので、入浴の際も外陰部をやさしく洗う程度に留めた方がよいでしょう。

③禁煙する
喫煙は細菌性腟症を発症するリスクのひとつとされているため、細菌性腟症を予防したい方、あるいは何度も再発している方は、思い切って禁煙することをおすすめします。
自分の意思でたばこをやめるのが難しい方は、禁煙外来などに相談し、適切な治療を受けることを検討しましょう。

細菌性腟症のまとめ

治療薬を投与すれば、数日で症状は治まりますが、
再発リスクの高い疾患ですので、日頃から
発症の原因となる行動は慎むことが大切です。
また、他の性病と類似する症状もいくつかありますの
で、勝手に自己判断することなく、適切な検査
行って正しい治療を受けるようにしましょう。