細菌性腟症のまとめ
- ①腟内の細菌バランスを正常に保つために起こる症状
- ②発病する女性の半数は目立った症状がない
- ③放置すると重篤な合併症を引き起こす可能性がある
- ④腟の過度な洗浄にも注意
細菌性腟症にかかる女性の約半数は無症状とされています。しかし再発しやすく、妊娠中の合併症や婦人科感染症のリスクと関連することがあるため、気になる症状がある場合は早めの治療がおすすめです。
今回は、細菌性腟症の主な症状や原因、治療法、予防法について解説します。
細菌性腟症は、微生物のはたらきによって発症する腟感染症の一種です。
通常、健康な腟内には、体にとって良い菌(善玉菌)と悪い菌(悪玉菌)がどちらも存在し、その人に固有の「腟内フローラ」を作り上げています。しかし、抗菌薬の使用やホルモンバランスの変化、不規則な生活習慣、デリケートゾーンの洗いすぎなどによって腟内フローラのバランスが崩れると悪玉菌が増殖し、細菌性腟炎を引き起こすことになります。
細菌性腟症の有病率は国や地域にかかわらず高い傾向にあり、23~29%の女性が細菌性腟症に感染しています。[注1]
また、治療によって症状が改善しても再発することがあるため、デリケートゾーンのケアや生活習慣に気を配ることが大切です。
細菌性腟症を発症すると、灰色または白色のサラサラとしたおりものが分泌されるようになります。
おおりものが生臭い匂いがするのも特徴で、特に月経中や性交後は匂いが強くなる傾向にあります。ただ、かゆみなどの症状を伴うことはまれで、かつ罹患した女性の半数は無症状であることから、細菌性腟症に気付かない人も少なくありません。
しかし、細菌性膣症は骨盤内炎症性疾患と呼ばれる病気を引き起こす要因となることがあります。
骨盤内炎症性疾患に罹患すると、下腹部痛や発熱、吐き気などの症状に見舞われるほか、卵管の閉塞、腹膜炎などの重篤な合併症を引き起こす原因となるため、細菌性腟症は早期発見・早期治療することが重要です。
また、妊娠中の女性が細菌性腟症を発症すると、胎児を包んでいる羊膜が感染症を引き起こすリスクがあるほか、早産や分娩後および流産後の子宮感染症などの原因となる場合があります。
細菌性腟症の根本原因は、腟内に存在する常在菌が過剰に繁殖し、細菌バランスが崩れてしまうことにあります。[注2]
腟内には多種多様な細菌が存在していますが、そのうち75~95%を占めるのが乳酸桿菌と呼ばれる細菌です。 乳酸桿菌はグリコーゲンを分解して乳酸を生み出すことで、腟内をpH4.5以下の適度な酸性に保っており、感染症の原因となる雑菌の侵入をふせぐ役割を担っています。
しかし、何らかの理由で乳酸桿菌の数が減少すると、腟内の細菌バランスが崩れ、感染症を引き起こす原因となるガルドネレラ・ヴァギナリスやペプトストレプトコッカスといった常在菌が異常繁殖し、細菌性腟症を引き起こします。
細菌性腟症のくわしいメカニズムは未だに全容解明されていませんが、以下3つのケースに該当する人は細菌性腟症のリスクが高くなるといわれています。
細菌性腟症は性行為の有無に関係なく発症する疾患ですが、不特定多数の人と性交をすると、発症リスクが上がるといわれています。
その理由として、アルカリ性の精液によって腟内のpHバランスが変化する可能性があること。自身の外陰部にある雑菌が性行為によって腟内に侵入することなどが挙げられます。
同様に、汚い手で陰部に触れたり、常在菌の多い口を使ったオーラルセックスを行ったりすると、細菌性腟症にかかりやすいといわれています。
腟を過度に洗いすぎると、乳酸桿菌も殺菌されてしまい、細菌性腟症のリスクが高くなります。
特に細菌性腟症にかかると、おりものの状態が変化したり、陰部の匂いが強くなったりするので、陰部を過剰に洗う人が多いのですが、細菌性腟症の対策としては逆効果になりますので要注意です。
喫煙は細菌性腟症の危険因子の一つとされています。喫煙は腟内の善玉菌を減少させ、細菌バランスを乱すことで発症や再発のリスクを高める可能性があります。そのため、細菌性腟症の予防や再発防止のためには禁煙も重要です。
細菌性腟症に罹患しているかどうか診断する方法は、医師による評価と内診です。
まずは、医師による評価を行います。灰色または白色のおりものが出る、おりものに悪臭がするといった症状が出ている場合は、細菌性腟症を疑い、最近の行動や性行為について質問し、原因を絞り込んでいきます。 問診の結果、性病の疑いが濃厚と判断された場合は、内診を行います。
おりものなどの分泌物のサンプルを採取し、顕微鏡で調べて原因となる微生物を特定します。ただ、病原菌がはっきりしているトリコモナス腟炎や真菌感染症(カンジダ症)とは異なり、細菌性腟症は乳酸桿菌の現象にともなう好気性菌または嫌気性菌の異常繁殖によって発症するため、原因菌を特定することはできません。
そのため、トリコモナス菌やカンジダ真菌などが検出されず、かつ腟内のpHが5.0以上の場合は、医師の評価と合わせて細菌性腟症と診断されるのが一般的です。
他の性病と区別するためにも、適切な検査が必要
細菌性腟症の主な症状である「灰色・白色おりもの」や「おりものの悪臭」は、クラミジアや淋菌といった他の性病と類似する部分があります。
そのため、セルフ診断では細菌性腟症なのか、それ以外の疾患なのか正確に判断するのは困難です。
最近は性病の原因菌を除菌する薬をインターネット通販などで購入する人が増えてきていますが、特定の病原菌が原因で発症するクラミジアや淋菌と、乳酸桿菌の減少が主な要因である細菌性腟症では、根本的な治療法に違いがあります。
誤った自己判断を下し、ネットなどで手に入れた治療薬を使用すると、いつまで経っても症状が治まらないのはもちろん、場合によっては症状が悪化する原因となることもあります。
そもそも、インターネットで購入できる治療薬の中には偽物も少なくありませんので、安全に治療したいのなら、適切な検査を行った上で、正しい治療を受けることが大切です。
細菌性腟症の治療方法には「局所療法」と「内服療法」の2パターンがあります。
ここでは、それぞれの治療法の特徴をご紹介します。
■局所療法
抗菌薬の一種であるメトロニダゾールまたはクリンダマイシンの錠剤を腟内に直接投与する方法です。
メトロニダゾールとクリンダマイシンは、いずれも米国疾病予防管理センターの性感染症治療ガイドラインで推奨されている治療薬で、腟内を正常に保つために必要な乳酸桿菌には影響を与えず、その他常在菌のみを効率よく除菌することができます。[注3]
一般的に、1日1回の投与を7~10日間ほど続けると症状が改善します。
■内服療法
メトロニダゾールの錠剤を内服して治す方法です。ただ、内服薬のほうが全身に副作用が現れやすく、時として食欲不振や胃部不快感、吐き気などの症状が見られる場合があります。また、妊娠中の女性には適さないので、腟剤を使った局所療法を用いるのが一般的です。
細菌性腟症は、局所療法や内服療法によって多くの場合改善が期待できます。治療を開始すると数日以内に症状が軽快し始めることが多く、します。ただ、細菌性腟症は再発しやすく、同じような生活を送っていると二度、三度と罹患する可能性があります。
また、細菌性腟症は無症状のまま経過することも多い病気ながら、重篤な合併症を引き起こすリスクがありますので、普段から予防に励むことが大切です。
ここでは、細菌性腟症を未然に防ぐための対策を3つご紹介します。
① 雑菌が入るような性行為を避ける
性行為を行う際は、雑菌が入るような行動を避けることが大切です。
汚い手で腟に触れたり、口腔内が汚れたままオーラルセックスを行ったりすると発症リスクが高まりますので、性行為を行うときは事前に男性側が手洗い、歯磨きなどを徹底しましょう。
また、妊娠を希望しない場合は、必ずコンドームを使用し、アルカリ性の精液が腟内に入らないよう配慮することも大切です。 他にも、不特定多数の人と性行為を持たないなど、セックスの在り方を見直すことで、細菌性腟症のリスクを低減させることができます。
②腟は適度な洗浄を心がける
腟を洗浄しすぎると乳酸桿菌の減少につながりますので、ボディソープなどを使ってごしごし洗うのはNGです。
もともと腟内は乳酸桿菌のはたらきによって衛生的に保たれていますので、過度な洗浄は必要なく、生理中や性行為の前後などにぬるま湯で洗浄するだけで十分です。
細菌性腟症になると匂いのあるおりものが増えるので、気になってつい洗いすぎてしまう方が多いのですが、かえって逆効果になりますので、入浴の際も外陰部をやさしく洗う程度に留めた方がよいでしょう。
③禁煙する
喫煙は細菌性腟症を発症するリスクのひとつとされているため、細菌性腟症を予防したい方、あるいは何度も再発している方は、思い切って禁煙することをおすすめします。
自分の意思でたばこをやめるのが難しい方は、禁煙外来などに相談し、適切な治療を受けることを検討しましょう。