- ①尿素窒素は腎機能を評価するための指標
- ②一般的には女性より男性のほうが数値が高い
- ③尿素窒素が高い場合には腎臓の働きが悪くなっている
- ④数値を適正にするには健康的な生活習慣を心がける
尿素窒素が高いと腎臓への負担が増え、健康に影響を与える可能性があります。この記事では、尿素窒素を下げるための食品や改善法を紹介します。尿素窒素の数値に不安がある方は、ぜひ参考にして日々の生活に取り入れてみてください。


尿素窒素とは何か
アミノ酸を代謝する過程でアンモニアが発生します。アンモニアは有害物質であり、肝臓で解毒化されて尿素に変わります。この尿素の中にある窒素を「尿素窒素」(BUN:Blood Urea Nitrogen)と呼びます。
尿素窒素は、腎機能を評価するための指標となりますが、腎機能の評価はクレアチニン値も考慮して、医師が総合的に判断します。
基準値は、8.0〜20.0mg/dLです。
尿素窒素値が高くなりやすい人や高い原因とは?

尿素窒素は一般的に、女性より男性のほうが、10〜20%高く検出されます。また、小児より高齢者で高値を示す傾向があります。
なお、検査値の日内変動も見られ、夜間は低値となり、日中は高値となります。
尿素窒素が高値となる原因について、主に考えられることを以下に記します。
1.タンパク質の摂取量が多い
尿素窒素は、体内のタンパク質が分解されることで生成されるので、食事内容の影響を大きく受ける検査項目となります。
タンパク質を多く摂取した際には、尿素窒素の値が上昇します。
2.高熱時
高熱時には、体温を上げるためにエネルギー源としてタンパク質を消費し、尿素窒素が生成されます。
3.外科手術後など
内臓や皮膚の修復にタンパク質を消費し、尿素窒素が生成されます。
4.激しい運動後
運動により傷ついた筋肉を修復するためにタンパク質を消費し、尿素窒素が生成されます。
5.心不全やショック状態
心機能が低下すると、全身に流れる血液量が減少します。その結果、腎臓の血液量も低下し、老廃物が排泄できなくなります。尿素窒素も血液中に留まることになり、値が上昇します。
6.消化管出血
消化管から出血すると、その血液(タンパク質)が消化され、尿素窒素が生成されます。
7.腎臓疾患
老廃物を濾過する腎臓や、尿を排泄する膀胱などの機能が阻害された場合、尿素窒素の値は上昇します。
尿素窒素が高いとどんな症状がでる?

尿素窒素が高い場合には、腎臓の働きが悪くなっていることが考えられます。
血液中の尿素窒素が80〜100mg/dLを超える場合、尿毒症を疑います。
尿毒症は、腎機能が著しく低下したり、尿路閉塞を起こして排尿が阻害された場合などで、体内の老廃物や余分な水分が排出されなくなった状態です。さまざまな症状が引き起こされます。
◎血液中の老廃物が排泄できないことによる
頭痛、嘔気、嘔吐、倦怠感、皮膚のかゆみ、睡眠障害、イライラする、など
◎水分が排泄できないことによる
浮腫、動悸、息切れ、高血圧など
◎腎臓で産生される造血ホルモンが欠乏することによる
貧血
さらには、痙攣、肺水腫、出血しやすくなるなどの重篤な症状がみられ、全身状態が悪化して意識障害に陥ることもあります。
尿素窒素が低い場合
尿素窒素が6mg/dL以下になるとき、低尿素窒素状態と判断します。(施設ごとに多少の基準変動があります)。
低尿素窒素状態自体はとくに症状はありませんが、低尿素窒素状態となる原因に、随伴する症状がみられることがあります。主な原因として考えられることは、以下に記します。
1.重度の肝機能障害
尿素はアンモニアが肝臓で分解されるときに生成されます。肝機能障害がある場合、アンモニアが無毒化できず、尿素が生成されないため、低値となります。
アンモニアが増え続けると高アンモニア血症に陥り、脳機能に障害が起きる「肝性脳症」を引き起こします。意識障害がおき、生命維持に支障のある危険な状態となります。
2.低栄養状態
ダイエットによる極端な食事制限などでタンパク質の摂取が減少すると、タンパク質の分解によって生成される尿素が減少します。よって尿素窒素が低値となります。
3.妊娠
妊娠中は、タンパク質が胎児の成長に使用され、妊婦の全身血液量が増加します。その結果血液中の尿素窒素が低値となります。これは一時的な現象なので出産を終えると正常値に戻ります。
4.尿崩症
多尿となり尿素窒素の排泄が亢進すると、血液中の尿素窒素が減少します。
5.ビタミンB6不足
ビタミンB6は、タンパク質の分解に必要になります。不足した結果、尿素窒素が低値となることがあります。
尿素窒素値を正常に保つ食品と改善方法
腎臓の機能を保つためには、食事療法、適切な薬物療法、そして健康的な生活習慣が大事です。
定期的な医師の診察と検査を受け、個々の状態に応じた治療方針を順守しましょう。
◎尿素窒素値を下げる(腎臓に良い食品)
尿素窒素値が高いということは、腎臓に負荷がかかっているということです。腎臓に優しい食事を心がけましょう。
三食バランス良く摂取することが大事ですが、腎臓のためにとくに気をつけることは「減塩」「低タンパク食」「カリウム制限」「高カロリー食」「リン制限」です。
ただし、過度な食事制限は必要な栄養の摂取が妨げられ、全身状態の悪化にもつながりかねません。医師や栄養士の指導の下に食事管理を行ってください。
1.減塩
塩分(ナトリウム)は、体内で水分と結びつくため、血液量が増えます。血液を濾過して老廃物を体外へ排出する腎臓の負荷が増えるため、塩分制限を行います。
きのこ類
植物性油脂
米
豆類
ねぎ
2.低タンパク食
タンパク質は体内で代謝され、「尿素窒素(BUN)」が残ります。摂取するタンパク質が増えると尿素窒素が増え、排泄するために腎臓に負荷がかかります。腎臓の負荷を減らすために低タンパク食が推奨されることがあります。
しかし、タンパク質は人体には必要な栄養素なので、腎臓に負荷がかからない程度のタンパク質摂取は必要です。自己流でのタンパク質制限は危険なので、必ず医師や栄養士と相談して実施してください。
鶏手羽元(1本) | 4g |
牛カルビ(100g) | 12.8g |
豚バラ肉(100g) | 14.4g |
牛肩ロース(100g) | 16.2g |
鶏もも皮つき(100g) | 16.6g |
豚ひき肉(100g) | 17.7g |
3.カリウム制限
野菜や果物に多く含まれるカリウムですが、腎臓が弱っているとカリウムの排泄も負担になってきます。カリウムが体内に残り続けると、高カリウム血症となり、致死的な不整脈を引き起こす可能性があります。
もずく(塩抜き50g) | 1mg |
さやえんどう(1本) | 6mg |
しらたき(50g) | 6mg |
あぶらあげ(生1枚) | 17mg |
板こんにゃく(50g) | 17mg |
4.高カロリー食
カロリー摂取量が減ると、腎臓の働きを維持するために筋肉が分解されます。筋肉はタンパク質ですので、尿素窒素が生成され、腎臓に負荷をかけることになります。カロリー摂取のためにタンパク質は増やせないので、「糖質」と「脂質」を増やしてカロリーを補給します。
5.リン制限
腎機能が低下するとリンの排泄ができなくなり、骨が弱くなったり、動脈硬化を引き起こしたりするため、リンの摂取を控える必要があります。リンはタンパク質に含まれるので、タンパク質を制限すると自然とリンの摂取も制限されます。
野菜は一度茹でることでカリウムを減らすことができます。
乳製品はリンが多いですが、乳酸菌飲料であればリンは少ないです。
飲み物であれば、紅茶、麦茶、玄米茶、水はリンの含有量が少ないです。
アルコールであれば蒸留酒(ブランデー、ウイスキー、焼酎)が良いです。
◎尿素窒素値を上げる食品
低栄養状態で尿素窒素が減少している場合には、高タンパクのものを摂取するように心がけバランスの良い食事をしましょう。
◎生活習慣の改善
水分摂取 | 腎臓の状態によっては水分制限が必要になる場合もあるため、医師の指示に従うことが大切です。 |
定期的な運動 | ウォーキングやヨガなど定期的な運動 |
アルコールと喫煙の制限 | アルコールの過剰摂取や喫煙は腎臓に悪影響を及ぼします。 |
血糖値や血圧の管理 | |
十分な睡眠とストレスの軽減 | |
食生活 |
自分の尿素窒素値を知るには?
自分の尿素窒素値が気になる場合、どこで検査したらよいのかご紹介します。
1.病院・クリニック
腎臓病が疑われる症状がある場合は病院・クリニックを受診しましょう。この場合は、内科または腎臓内科、泌尿器科などが受診先となります。
2.健康診断
現在とくに自覚症状がない場合は、年に一度か二度ある定期健康診断を受けましょう。会社勤めの方は会社の健康診断になりますが、国の定めた項目に、尿素窒素は含まれていません。会社によっては独自に尿素窒素を検査項目として設定しているところもあります。自分の所属する健康保険組合の健診内容については、ご自身で調べる必要があります。
国民保険加入者の場合、定期健康診断に尿素窒素は含まれていないため、その他の手段で検査を受ける必要があります。
3.郵送検査
自宅にいながら検査キットを購入して調べることができます。自分の都合の良いタイミングで実施でき、誰かと対面することなく検査完了できます。
自覚症状のない人の場合は、1(場合によっては2も含む)を除く方法での定期検査が選択できます。定期的に尿素窒素値を測定することは、腎臓病予防の意識を高めるだけでなく、腎臓病を早期に発見して治療を開始することで症状の悪化や合併症を防ぐことが可能となります。
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医師の指示にしたがって減塩や低タンパク質な食事を心がけたり運動などを行い定期的な検査をして調整していくことが大切です