- ①梅毒は無症状の期間や症状が無くても感染している場合がある
- ②梅毒はキスでも感染するケースがある
- ③近年感染者が急増している
- ④定期的な検査を行いましょう
梅毒は、感染して症状が出ても気がつかなかったり、症状が消える期間があるため、治ったと勘違いしてしまうケースが多い性病です。症状が消えてもパートナーには移してしまう状態のため、定期的な検査と適切な治療を行うことが大切です。
今回の記事では、感染リスクとや心当たりがない方が見逃しやすい原因、検査や治療について紹介します。
梅毒とは何か?近年の増加傾向や梅毒の症状
梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌が原因で起きる感染症です。
第五類感染症(全数把握対象疾患)に定められており、診断した医師は7日以内に最寄りの保健所に届け出ることになっています。
梅毒の症状は、症状のない時期を挟んで三段階で現れ、段階によって症状が違います。各段階が進むにつれ重症化していきます。
【第一期】
感染後約3週間経過後に性器や口唇などの感染部位に、しこりやできものが出ますが痛みなどはないことが多く、気づきにくいです。
初期硬結は、男性は亀頭や陰茎、冠状溝(亀頭と陰茎の境目のくびれた部分)に、女性は大陰唇、小陰唇、膣内などの皮膚に現れ、その他、口唇や口内・肛門などにも現れ、潰瘍化します。これを硬性下疳と呼びます。このような症状は数週間で自然に消えます。
【第二期】
感染から約3ヶ月経過すると全身や手のひらや足の裏などに赤い発疹が出たり、外陰部や肛門に腫瘤ができたり脱毛が見られたりします。その他、発熱、体重減少、倦怠感などが現れます。数週間〜数カ月で症状は自然に消えます。
【潜伏期】
症状はないですが、体内では病気が進行しています。
【第三期】
感染から数年〜数十年後に心臓や血管、神経に異常がおきます。
心血管・神経・眼の症状、ゴム腫(皮膚や筋肉、骨にできるゴムのような腫瘤)、脳や神経、脊髄が侵され死亡に至ることもあります。

梅毒の感染者数は1948年の報告開始から年間約11,000人の報告があり1967年以降は減少していましたが、2011年頃から感染者が増え始め、2021年以降急増し続けています。
2024年の感染者数は14,663人となり、感染症法による調査の始まった1999年以降では、2023年の14,906人に続いて過去2番目に多くなっています。
感染者数は男性のほうが多いですが、男性は年代差があまりないのに対して、女性は20代の感染者が目立って多くなっています。
梅毒の潜伏期間
梅毒に感染してから第一期の症状が現れるまで約1週間〜13週間の期間があります。症状の現れないこの期間を潜伏期間といいます。
梅毒の主な感染経路
1.性行為
梅毒の病原体は、感染者の血液・精液・膣分泌液に多く含まれます。
性行為は異性間の挿入行為に限らず、オーラルセックスや、アナルセックスも含みます。
性器の粘膜に形成される硬性下疳や全身の皮膚に現れる発疹といった梅毒の病変部は感染力が高く、そこから分泌される分泌液には多くの病原体が検出されます。そのため、口に病変部がある場合には、唾液を介して感染する恐れがあるのです。これが、梅毒がキスでもうつるといわれる要因です。
2.血液感染
梅毒感染者からの輸血、臓器提供、注射針の共用などがあります。現在は輸血や手術前の検査は徹底され、注射針などは使い切りのディスポーザブルなので、これらの理由で感染することはまれなことです。
違法薬物使用の際に注射器の使い回しなどで感染する例はあります。
3.母子感染
感染している母体の胎盤を経由して、胎児に感染することで母子感染が成立します。
妊娠時に梅毒感染の検査を行うため、生まれてくるこどもに感染する前に治療を行うことが可能です。ただし、検査後に感染した場合や、妊婦健診を受けていない場合に感染したまま出産を迎え、母子感染が起きてしまうことがあり、近年、梅毒患者の増加とともに、母子感染も増えています。
心当たりのない感染経路

感染経路に心当たりがないのにも関わらず、検査で陽性が出る場合があります。
①無症状のパートナーからの感染
梅毒には感染後、発症するまでの潜伏期間があります。
このとき自分が感染していることに気づかないうちに、相手に梅毒をうつしてしまうことがあります。
また、自覚症状がないまま、長期間梅毒に感染した状態の人もいます。症状が出ていなくても感染力はあるので、パートナーに梅毒を感染させてしまう可能性があります。
②第一期から第二期への移行
梅毒の第一期の症状が発現したあと、なにもしなくても症状が消失し、その後しばらく無症状期間があります。このとき、治癒したと思い放っておくと、第二期へと進行します。その際に、治ったはずの病気にまた感染した!と感じるかもしれません。
それは梅毒トレポネーマが勝手に消えたわけではなく、梅毒の自然な経過です。
③剃刀など、傷のある皮膚から感染
梅毒トレポネーマは、感染者の血液や体液の中に潜んでいます。感染者の血液や体液に触れ、それが自分の体内に入った場合、梅毒に感染する可能性があります。
使用時に血液に触れやすい剃刀などは、共用した場合に梅毒に感染する可能性が高いです。オーラルセックスやアナルセックスなども、口腔内や肛門周囲に傷があれば感染します。
④輸血
献血された血液中に梅毒トレポネーマが含まれていた場合は、輸血を受けた側が梅毒に感染します。
現在、献血時の検査を徹底していること、検査で発見できなかった場合に備え冷蔵保存された血液を使用すること、といった対応により感染のリスクを大幅に減少させています。近年、輸血による梅毒感染は報告されていません。
⑤母子感染
梅毒の原因となる梅毒トレポネーマが感染している母体の胎盤を経由して、胎児に感染することで母子感染が成立します。
妊婦の梅毒感染者のうち、約70%は無症状であるという報告があります。
梅毒に感染している妊婦が無治療の場合には、40%にも及ぶ児が、死産または新生児期に死亡する可能性があります。
無治療の母体からの母子感染リスクは第一期が一番高く、病期が進むにつれて減少していきます。また、感染時期が妊娠の後期ほど感染リスクは高くなります。
母子感染のリスク
【第一期】:70-100%
【第二期】:70%
【早期潜伏期】:40%
【後期潜伏期】:10%
日本産科婦人科学会が実施した全国調査「性感染症による母子感染と周産期異常に関する実態調査」では、梅毒にかかっている妊婦のうち1/4は妊婦健診未受診または不定期受診であるという結果が報告されています。
妊娠4ヶ月時に実施される妊婦のスクリーニング検査を受診しないことで、梅毒にかかっていることに気づかず、妊婦本人の治療が遅れ、母子感染が発生してしまいます。
梅毒感染妊婦の年齢は10〜20代が70%を占め、日本における先天梅毒の増加は若年層の梅毒感染妊婦の増加と相関しています。
⑥検査の誤り
梅毒に感染していないのにもかかわらず、関節リウマチや全身性エリテマトーデス、肝疾患などが原因で検査が 陽性となる場合があり、これを生物学的偽陽性と呼びます。
これは検査方法により発生するものです。
梅毒の検査で、リン脂質に対する抗体を検出する方法では、梅毒以外の疾患でもリン脂質に対する抗体が産生されることがあり、これを検出してしまうことで偽陽性となることがあります。
ほかの可能性としては、妊娠やワクチン接種、梅毒に似たトレポネーマ感染(歯周病菌など)があります。
梅毒感染のリスクと放置することの危険性
梅毒は、治療をしなければ治ることはありません。症状が消えたとしても、治療をしていないのであれば、体内に梅毒の病原体が残っているため、次の病期へと進行していきます。病期が進行するにつれて症状は悪化し、治療に要する期間が長くなります。
適切な治療で完治はしますが、全身状態が悪化することで予期せぬ合併症が起きることも考えられます。
梅毒の検査方法
梅毒を早期発見するためにも、自分に合った検査方法を知っておきましょう。
医療機関での検査
梅毒に感染すると、体内に【梅毒トレポネーマに対する抗体】と【脂質抗原に対する抗体】の2種類の抗体ができます。
検査には採血によって採取した血液が用いられます。
同時に、医師の診察時に、梅毒の特徴的な症状が現れていないか等の視診と、梅毒に感染するような機会や行動があったかなどの問診が行われ、血液検査の結果を踏まえて総合的に判断されます。
梅毒の検査について
梅毒の検査には大きく3つ、【TP抗原法】と【STS法】、【暗視野顕微鏡下鏡検】に分類されます。
【TP抗原法】
血液中の抗トレポネーマ抗体(TP抗体)を検出します。抗トレポネーマ抗体とは、梅毒に感染した際に体内に作られる特異的な抗体です。
この検査が陽性の場合、梅毒に感染している、もしくは過去に感染したことがあることがわかります。
過去に感染し、治療を受けて治癒した際も、抗トレポネーマ抗体は体内に長く残り続けます。そのせいで、この試験だけでは、梅毒に感染中なのか、治癒済みなのかがわかりません。その場合は別の検査が必要となります。
【STS法】
脂質と結合する抗体を検出する手法で梅毒感染の可能性を判定しますが、梅毒トレポネーマに特異的な検査ではないので、この試験だけで梅毒陽性と判断できません。
STS法では、梅毒のほかに全身性の感染症(リケッチアや結核など)、予防接種、全身性エリテマトーデス、抗リン脂質抗体症候群、妊娠などで陽性が出ることがあります。
STS法にはRPR法やガラス板法など数種類ありますが、RPR法が主に用いられています。
TP抗原法 | STS法 | 判定 解釈 |
陰性(-) | 陰性(-) | 梅毒感染はない。 梅毒感染のごく初期の可能性もあり、感染の疑いがあるときは期間をあけて再び検査を行う。 |
陰性(-) | 陽性(+) | 梅毒感染の初期(期間をあけて再びTP抗原法を実施して、陽性反応を確認する)。または、生物学的偽陽性の可能性がある。 |
陽性(+) | 陽性(+) | 梅毒感染(梅毒未治療)。 または梅毒治療中や治療後まもない抗体保有者。 |
陽性(+) | 陰性(-) | 梅毒治療後の抗体保有者。 または、TP抗原法での偽陽性反応の可能性や、梅毒感染の初期の可能性がある。 |
【暗視野顕微鏡下鏡検】
粘膜や皮膚の病変部を顕微鏡で観察し、梅毒トレポネーマの存在を目視します。
実施できる施設が限られるため、現在はTP抗原法とSTS法の血液検査での診断がほとんどです。
自宅でできる検査キット
自宅にいながら検査キットを購入して調べることができます。
自分の都合の良いタイミングで実施でき、誰かと対面することなく検査完了できます。
GMEでは梅毒の郵送検査キットを販売しています。
GMEの梅毒検査は、今現在治療を必要としているかを判定できます。今現在梅毒に感染していて治療の必要があるのか、過去に感染していて今は治療の必要がないのかをTP抗原法とSTS法(RPR)の2種類の検査を用いて判定しています。
お電話やWEBでご注文が可能で、当日15時までの受付で即日発送、一部地域を除いて翌日配送されます。
検査キットが届いたら、お好きなタイミングで検体を採取し、返信用封筒に入れてポストに投函するだけです。
365日検査を行っているため、GMEに検体到着後、最短翌日には結果を確認していただけます。
検査結果はインターネット・お電話での確認が可能です。万が一、結果が陽性だった場合は、全国のGME協力医療機関を受診すれば、スムーズに治療も可能です。
梅毒の治療と注意点

万が一、梅毒が陽性だった場合、どのような治療が必要になるのか。また、治療の際の注意点についても解説します。
◎抗生物質による治療
梅毒の治療には抗生物質が有効です。治療により完治することが可能です。
第一選択薬(①か②を選択)
①ベンジルペニシリンベンザチン
早期梅毒:1回240万単位を単回筋注
後期梅毒:1回240万単位を週1回で計3回の筋注
②アモキシシリン
1回500mgを1日3回で28日間内服投与
①の場合、早期梅毒であれば一度で治療が終わるので再検査以外の通院が不要というメリットがあります。
②の場合、1ヶ月の継続投与が必要なため、治療継続が困難な場合は①を選択します。
第二選択薬
ペニシリンにアレルギーがある場合
ミノサイクリン:1回100mgを1日2回で28日間経口投与。妊婦には催奇形性があるため禁忌です。
◎パートナーの同時治療
梅毒は、感染者が治療を受けても、パートナーが未治療である場合、再び感染する可能性があります(ピンポン感染)。再感染を防ぐためには、パートナーも同時に検査・治療を受けることが重要です。
◎治療後の経過観察
投薬後は、可能であれば定期的な抗体検査を実施しましょう。
治療開始後4週間ごとに抗体検査を行い、STS法の自動化法の検査では治療前値の2分の1に、STS法の2倍系列希釈法の検査では治療前値の4分の1に低下した場合に治癒と判定します。
STS法陰性早期梅毒ではTP抗原法の検査で低下傾向が確認できれば治癒と判定します。治癒判定後も定期的に検査を行いながら1年ほど経過観察を行うのが望ましいです。
◎治療後の注意点
ペニシリンが梅毒トレポネーマに反応することで、投与24時間以内に発熱や頭痛、筋肉痛などの反応がみられることがあります(ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応)。
筋肉注射による疼痛、腫脹などが起きることもあります。なお、ペニシリン投与後、一週間ほどで薬疹が起きることもあります。
梅毒感染後の性行為について
治療期間中の性行為によりパートナーに感染させてしまう可能性がありますので、治癒が確認できるまでは性行為を控えることが推奨されています。
https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/syphilis_240404.pdf
梅毒感染の予防
梅毒の感染を予防するためには、以下の対策を行う事をおすすめします。ただし対策をしても
定期的な性病検査を行うことが大切です。◎性行為時の対策【コンドームの正しい使用方法】

①使用前
パッケージの破損や使用期限を確認。破れていないかをチェック。男性器に合った大きさのものであるか確認。

②取り出し
清潔な手で、 爪やアクセサリーで傷つけないよう注意して開封。

③装着
勃起した状態で、先端の空気を抜きながら根元までしっかり装着。根本の皮が余る場合は、一度中間部まで皮と一緒にコンドームを戻し、皮も一緒に巻き込んで根本まで再度下ろす。

④使用中
使用中にズレたり外れたりしないか確認。潤滑剤を併用すると破れにくくなる。

⑤使用後
射精後すぐに根元を押さえて抜き、中身が漏れないようティッシュ等に包んで廃棄。トイレには流さない。
つけ直し、使いまわし、二枚重ねての使用などは避けましょう。
◎定期的な検査の重要性
自覚症状が少なく、気づきにくい
梅毒は、感染初期に痛みのないしこりや発疹が現れることがありますが、これらの症状は自然に消えることがあり、感染に気づかないまま放置されることがあります。症状が消えても治癒したわけではなく、病気が進行する可能性があります。
放置すると重篤な合併症を引き起こす可能性がある
治療が遅れると、梅毒は心臓や神経、脳などに深刻な障害をもたらすことがあります。また、妊婦が梅毒に感染すると、胎児に母子感染し、早産や死産、先天梅毒のリスクが上昇します。
他人への感染拡大を防ぐ
自覚症状がなくても感染力があるため、知らないうちにパートナーに感染させてしまう可能性があります。
これらを防ぐために、早期発見・早期治療はとても大切です。
このような方々は、定期的な梅毒検査を受けることを検討しましょう。
・複数の性的パートナーがいる方
・性風俗関連の仕事に従事している方
・妊娠を希望している方、または妊婦
・過去に梅毒に感染したことがある方
・性感染症のリスクが高い行動をとった方
早期発見・早期治療で自分と相手の健康を守る
梅毒は、初期には無症状で感染に気づかずに広がりやすい感染症です。
近年、感染者が急増しており、特に20代の女性に多く見られます。
早期発見・治療が重要で、治療しなければ症状が進行し、命に関わることもあります。症状がなくても感染力があり、無症状のうちに誰かに感染させてしまうこともあります。
定期的な検査と治療で自分や大切な人の健康を守りましょう。
定期的な性病検査をして早期発見・早期治療を行いましょう