- ①皮膚炎・ホルモンバランス・性病など原因は様々
- ②ひどい場合は病院受診や検査を行う
- ③日常生活での予防を心がける
- ④性感染症だった場合は早めの治療が必要
デリケートゾーン(外陰部や膣周辺)のかゆみやかぶれは、多くの女性が一度は経験する悩みです。日常生活に支障が出るだけでなく、性感染症や皮膚疾患のサインである場合もあります。
この記事では、かゆみを引き起こす原因の紹介や、セルフチェックの方法、正しい対処法と予防法、検査に適した医療機関について解説します。
デリケートゾーンのかゆみの主な原因
デリケートゾーンは非常に皮膚が薄く、外部からの刺激や体内環境の変化に敏感です。また、下着などで常に覆われているため蒸れやすく、かぶれを起こしやすい環境にあります。
病名 | 原因 | 症状 |
接触性皮膚炎 | 汗・ムレ・下着による締め付け ナプキンやおりものシートの使用 |
ムレや汗などの刺激によるかぶれ |
ホルモンバランスの変化 | 更年期・生理前後 | デリケートゾーンの乾燥 粘膜が薄くなり、刺激に敏感になる |
性感染症 | カンジダ・トリコモナス・クラミジアなど | かゆみ・おりものの異常などが生じる |
アレルギー | アレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎 | 石鹸やコンドームなどの接触や、アトピーでかゆみを生じる |
◎外部刺激による接触皮膚炎
下着で締め付けすぎる
ムレや汗
生理用品やおりものシート
石鹸やボディソープの洗浄力が強い
剃毛や脱毛後
◎ホルモンバランスの変化
月経によるホルモンバランスの変化
更年期以降にエストロゲンの大幅な減少により、粘膜が薄くなるため刺激に敏感になる
◎感染症によるもの
カンジダ腟炎
トリコモナス
クラミジア感染症
性器ヘルペス
毛じらみ症
いんきんたむし
◎アレルギー
アレルギー性接触皮膚炎(石鹸、避妊具など)
アトピー性皮膚炎
この症状はもしかして性病?
かゆみ・かぶれだけでなく、おりものの状態や臭いにも注意が必要です。もしかしたら感染症にかかっているかもしれません。以下はセルフチェックの目安です。
性感染症 | 症状 | 特徴 |
カンジダ腟炎 | 強いかゆみ・白くポロポロしたおりもの | 常在菌の一種。抗生物質の使用後に起こりやすい。 |
トリコモナス腟炎 | 泡状のおりもの・悪臭・痛み | 無症状の事が多い。便器や浴槽などでも感染するケースがあります。 |
クラミジア感染症 | 黄色や緑のおりもの・下腹部痛 | 若い女性に多く、症状がない事も多いです。不妊症の原因にもなりえます。 |
性器ヘルペス | 外陰部に水ぶくれや潰瘍 | ピリピリとした痛みを伴う水疱ができます。 |
毛じらみ症 | 主に陰毛に寄生し、寄生部位にかゆみが生じる | 主な感染経路は、陰毛の直接接触による感染がほとんどです。 |
いんきんたむし | 股や太ももの内側が赤くなりかゆみがでる | カビ(白癬菌)による感染症です。 |
実は性感染症かも⁉デリケートゾーンの異常
性感染症は、性行為や口腔性交、肛門性交などで感染します。特定の症状がないまま感染している場合も多く、放置すると不妊症などの原因になるものもあります。
早期発見のためには定期的な検査が大切です。
クラミジア:16,201人
淋菌感染症:4,350人
性器ヘルペス:3,950人
性感染症の報告数 女性(2023年)[注1]
どんな時に病院や検査キットなどを考えるべき?

激しいかゆみや性病を疑う症状があるなど、以下のような症状がある場合は、医療機関の受診や郵送検査キットの活用を検討しましょう。
( 1 )かゆみが数日以上続いている
( 2 )性行為後に症状が出た
( 3 )おりもののにおいや色がいつもと違う
( 4 )腟や外陰部にただれ、水ぶくれ、痛みを感じる
( 5 )市販薬を使用しても改善しない場合
軽いムレやナプキンかぶれなど、原因に心当たりがあり1〜2日で改善傾向にある場合などは、通気性を見直すなどのセルフケアを行ってみましょう。
ただ、かゆみだけの症状でも、性感染症に感染しているケースもあります。放置すると不妊症の原因やパートナーへの感染リスクにつながることもあります。いつもと違うと感じたら、早めに受診や検査を検討しましょう。
かゆみを感じた時の正しい対処法
かゆみが軽い場合にはセルフケアを試してみましょう。また、病院を受診するまでの期間は、かゆみを悪化させないためにもセルフケアを行うことをおすすめします。
【1】自分でできるセルフケア
対処法 | 詳細・注意点 |
通気性の良い下着に変える | 化学繊維ではなく綿素材の下着を使用しましょう。締めつけないものがベストです。 |
かきむしらない | 皮膚に傷ができてしまうと細菌感染の原因になります。なるべく触らないようにしましょう。 |
石けんやボディソープの見直し | デリケートゾーン専用ソープを使用しましょう。洗いすぎやゴシゴシ洗いは悪化の元となるため避けましょう。 |
ナプキン・おりものシートをこまめに交換 | ナプキンやおりものシートの使用によりムレやすく、また経血やおりものの刺激によりかぶれることがあるのでこまめに交換しましょう。 |
入浴後はしっかり乾かす | 湿気がこもらないよう、やさしくタオルで拭き取り蒸れないようにしましょう。 |
刺激物や香料入りの製品を避ける | 柔軟剤や香り付きナプキン・シートも、かぶれの原因になることがあります。 |
市販のかゆみ止めクリーム(外用薬) | 一時的な皮膚の炎症などで症状が軽い場合には使用してもよいでしょう。ただし症状が強く出ていたり、悪化したり長引く場合には、使用を中止して医療機関を受診しましょう。 |
【2】病院を受診する
あまりにも我慢できないかゆみがあったり、症状が長引く、他の症状もある場合は、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
おりもの異常・性行為後の症状:婦人科
皮膚のかぶれ・ただれ・湿疹:皮膚科
【3】郵送検査キットを使う
病院の受診に抵抗がある方や、忙しくて時間が取れない方には郵送検査キットの使用もおすすめです。
自宅で簡単に検体(膣分泌物)を採取可能
数日以内にメールや専用サイトで結果確認ができる
協力医療機関などのアフターフォローがしっかりしている会社もある
「クラミジアや淋菌の感染に不安があるけど、病院には行きづらい」と感じている方は多くいらっしゃいます。郵送検査の場合は病院に行かずに検査を受けられるため、恥ずかしい気持ちを軽減することができます。
万が一、陽性の結果が出た場合は、医療機関と提携していて治療案内ができる郵送検査会社もあるため、安心して次のステップに進めます。
デリケートゾーンのかゆみを予防するために日常生活で気をつけるポイント

デリケートゾーンのかゆみ予防は「ムレ・摩擦・刺激」を減らすことが大切です。毎日のちょっとしたケアで、かゆみや不快感を未然に防ぎましょう。
・通気性の良い下着を選ぶ
ナイロンやポリエステルなどの化学繊維はムレやすく、かゆみの原因になります。通気性のある綿素材のショーツがおすすめです。
・締め付けの強い衣類を避ける
スキニーパンツやガードルなどは締め付けが強く、摩擦やムレを引き起こしやすくなります。
・おりものシートやナプキンはこまめに交換
おりものや経血に長時間触れていると、かゆみの原因になります。2~3時間ごとを目安に交換しましょう。
・デリケートゾーン専用のソープを使う
一般的なボディソープは刺激が強く、必要な常在菌まで洗い流すこともあります。弱酸性のデリケートゾーン専用ソープでやさしく洗いましょう。
・洗いすぎやゴシゴシ洗いはNG
外陰部はやさしく手で洗い、膣内は洗わないことが基本です。洗いすぎは乾燥やバリア機能の低下を招きます。
・入浴後はしっかり乾かす
湿ったまま放置するとムレやカビ(真菌)が繁殖しやすくなります。タオルでやさしく押さえるようにして乾かしましょう。
・生理中はとくに清潔に保つ
生理中は血液や分泌物がたまりやすく、刺激や雑菌が増えやすくなります。こまめなナプキン交換と洗浄を丁寧に行いましょう。
・ストレスや疲れをためない
ストレスや疲れがたまると自律神経やホルモンバランスが乱れて免疫力が落ちるため、かゆみが出やすくなることがあります。
・ホルモンバランスに注意
妊娠中・産後のかゆみはカンジダや湿疹の可能性もあります。保湿ケアと休養を意識しましょう。ピルの使用中は、定期的な婦人科チェックを行いましょう。
・性行為の前後にケアをする
潤滑剤不足や摩擦でかゆみや傷ができることもあります。行為の前後で清潔さを保つようにしましょう。コンドームを使用して性感染症を予防することも重要です。
・下着やタオルは清潔を保つ
洗濯時は十分にすすぎ、香料の強い柔軟剤は避けると安心です。
早期の検査と対処で症状を軽く抑える
デリケートゾーンのかゆみは、多くの女性が経験する身近な症状ですが、その原因はムレや摩擦といった日常的なものから、性感染症やホルモンの乱れなど医療的対応が必要なものまで多岐にわたります。かゆみを感じたら、肌への刺激を避けたセルフケアを試みましょう。
一方で、症状が長引いたり、おりものの異常・痛み・ただれなどを伴う場合は、早めに検査を受けましょう。適切な治療を受けることで、症状を悪化させずに完治できます。とくに、性感染症に感染していた場合は、放置すると不妊症になる可能性もあるため、早めに検査を受けて治療を行うことが重要です。
病院の受診が難しい場合には、郵送検査キットを活用すれば、自宅で手軽にチェックすることも可能です。
年齢やライフステージによってもトラブルの傾向やケアの方法は変化します。ちょっとかゆいだけと我慢せず、少しでも「いつもと違う」と感じたら自己判断せず、検査・受診を行いましょう。
「かゆみ」はカラダからのサイン無理せず、やさしく向き合いましょう