- ①悪臭を伴う泡状の黄緑色または灰色のおりものはトリコモナスの症状
- ②性行為で感染する
- ③汚染されたタオルや便座からも感染する
- ④無症状のこともあるためパートナーと一緒に検査する
デリケートゾーンのかゆみや、不快なニオイ、黄緑色のおりものが続いていませんか?その症状、トリコモナス症という性感染症のサインかもしれません。
放置するとパートナーへの感染や症状の悪化につながることも。
このコラムでは、トリコモナス症の見分け方や感染のメカニズム、治療法、自宅でできる検査方法まで詳しくご紹介します。正しい知識を身につけて、自分の身体を守りましょう。
黄緑おりものや膿が出るのは性病 考えられる原因と病名

おりもの(帯下)は、女性の腟や子宮頸部から分泌される液体で、腟内の潤滑や自浄作用を担っています。おりものの量や性状は生理周期(ホルモンの影響)により変化します。
正常なおりものの特徴
色 | におい | 量 | 性状 |
無色透明、乳白色 | ほとんど無臭 | 排卵期に増加します | 生理直後はサラッとした状態ですが、生理前には粘り気があり、卵白のような質感になります |
異常なおりものの特徴
色 | におい | 量 | 性状 |
黄色、黄緑色、緑色など | 魚の腐ったような悪臭 | 通常より多い | 泡状、豆腐のカスのような塊状、粘り気の増加 |
黄緑色や膿状のおりものが示す可能性のある疾患
トリコモナス症
トリコモナス・バギナリスという原虫によって発症します。性行為以外にも、汚染されたタオルや便座などからも感染する可能性があります。
淋菌感染症(淋病)
淋菌によって発症します。多くは軽症もしくは無症状で感染に気づきにくいです。
性器クラミジア感染症
日本で一番多い性病。クラミジア・トラコマチスという細菌に感染し、発症します。自覚症状が乏しく気づきにくいです。女性の不妊原因となりえます。
細菌性腟炎
腟内に常在する乳酸菌が減少し、好気性菌や嫌気性菌が異常に増殖し、腟内の細菌集団のバランスが崩れることにより発症します。
トリコモナス症について
トリコモナス症は、腟トリコモナス原虫によって引き起こされる性感染症です。腟トリコモナス原虫は単細胞の寄生性原虫(原生動物)で、鞭毛を持ち、鞭毛を動かすことにより移動することができます。乾燥に弱い嫌気性の生物で、酸素が少なくても生きられます。
人の腟や尿道、前立腺などで生存し、外環境でも湿気のある場所では短時間生存可能です。
トリコモナス症は主に性行為によって感染します。
感染すると、女性の場合は悪臭の強い泡状のおりものや、黄緑色のおりものなどがみられ、外陰部や腟に痒みがあり性交痛がみられることもあります。
◎主な感染経路
トリコモナスの主な感染経路は性行為です。
人の腟や前立腺・尿道に潜んでいるトリコモナスが、性行為によって相手の体内に侵入し、増殖します。
◎女性に多い症状と潜伏期間
・悪臭を伴う泡状の黄緑色または灰色のおりもの
・外陰部や腟の強いかゆみや刺激感
・排尿時の痛みや違和感
・性交時の痛み
・腟や外陰部の赤みや炎症
ただし、感染者の20〜50%が無症状であるともいわれます。
潜伏期間は5〜28日と言われていますが、原虫の数や感染者の免疫力などに左右され、感染から数ヶ月経って発症することもあります。
男性が感染した場合は、尿道炎を引き起こすことがありますが、無症状であることが多いです。
黄緑おりもの・膿=トリコモナス症?セルフチェックの目安
よく見られる症状
・泡状のおりもの
黄緑色または黄白色の泡立ったおりものが増加します。おりものは少量であることもあります。
・悪臭のあるおりもの
おりものの匂いは生臭く、魚が腐ったような匂いと表現されることもあります。
・外陰部や腟のかゆみ・刺激感
・排尿時の痛み・頻尿
トリコモナス症と他疾患との違い
多くの性感染症は細菌やウイルスが原因となりますが、トリコモナス症の原因は、トリコモナス・バギナリスという原虫です。
トリコモナス原虫は湿気のある環境下で生き残ることができるため、お風呂やトイレ、濡れたタオルなど介して感染する可能性があります。このような感染経路はトリコモナス症以外ではほとんどありません。
トリコモナス症と他疾患との違いは、おりものが泡状で強い悪臭がある点です。
自己判断の限界とリスク
トリコモナスは無症状であることも珍しくない感染症です。
感染を放置すれば、知らぬ間にパートナーに感染させてしまう可能性があります。妊婦が感染に気づかなかった場合、早産や低出生体重児の出産のリスクもあります。
自己判断で誤った薬を服用しても、トリコモナス原虫を駆除することはできません。
トリコモナス症が疑われる場合の対処法
トリコモナス症が疑われる場合は、まず婦人科や泌尿器科、性感染症科などの医療機関を受診することが大切です。症状が軽くても適切な検査と治療を受けることで、再発や感染拡大を防ぐことができます。
受診前に準備しておくこと
症状や状況の記録 | いつから、どんな症状があるのか、おりものの性状や匂いの有無、性行為を行った日の特定など、すみやかに答えられるように記録しておきましょう。 |
問診票の事前記入 | WEBで事前に問診票を入力したり、問診票をダウンロードして自宅で記入して診察時に持参するルールがある医療機関があります。ホームページなどで確認しましょう。 |
生理周期の確認 | 検査や治療は生理中でも可能ですが、経血が多すぎると検査に影響がでることがあります。生理周期を確認して受診予定をたてることをおすすめします。 |
パートナーへの相談 | トリコモナスは性行為で感染するため、パートナーにも感染している可能性があります。同時に治療することが望ましいため、パートナーと相談し、一緒に検査を受けましょう。 |
保険証の用意 | 医師が必要と判断した場合は保険適応になります。その場合は保険証が必要になるため、忘れないように準備しておきましょう。 |
費用と検査方法
医師の判断で検査が行われる場合は保険適応となります。
保険適応される場合は3割負担で5000円弱くらい、自己負担の場合は医療機関ごとに決められた費用が違いますが、3000円〜12000円程度で大きな差があります。
検査方法は大きく分けて三種類あります。
◎顕微鏡検査
腟や尿道から採取した分泌液を直接顕微鏡で目視します。
即時診断が可能なので、速やかに治療に移行する事ができますが、分泌液採取に不備があったり、トリコモナス原虫が少ない場合、診断の精度が下がります。
◎培養検査
分泌液を培地で培養し、トリコモナス原虫が増殖するのを確認します。
顕微鏡検査で感染が確定できなかった場合に有効な検査で、確実性は高いですが、培養に数日必要になります。
◎核酸増幅検査(DNA検査)
分泌液に含まれるDNA抽出し、トリコモナス原虫の遺伝子を検出します。
確実性が高く、感染初期など、別の検査での診断が難しい場合も正確な結果が得られます。
治療方法
トリコモナスの治療は、抗原虫薬を用います。
◎フラジール錠
250mgを1日2回、10日間服用
とても高い治療効果が望めます。
催奇形性があるため、妊娠初期は禁忌です。なお、フラジールはアルコールを分解する酵素の働きを疎外するため、服薬時および投薬終了後3日間はアルコール摂取はできません。
◎フラジール腟錠
1回1錠(250mg)を1日1回腟内に挿入、10〜14日間投与
妊娠時やその可能性がある場合などには腟錠が使用されます。
内服と違って副作用が少ないというメリットがあります。内服同様、投薬中はアルコール摂取はできません。
以前はチニダゾール錠も使用されていましたが、現在、製造上の都合による供給困難のため、製造販売が中止されており、国内で治療に使用される薬剤はフラジール一択となっています。
パートナーが感染していた場合の対応

パートナーがトリコモナスに感染していたと知らされたとき、驚きや不安を感じるのは自然な反応です。しかし、適切に対応することで、不安を取り除き、何度も繰り返し感染することや、病気を放置するリスクを防ぐことが可能です。
◎自分も必ず検査を受けるべき理由
パートナーと性交渉をしていた場合には、症状が出ていなくても感染している可能性がありますので、検査を受けるようにしてください。パートナーの治療が終わっても、ご自身が感染していると、再度パートナーが感染することになります。
◎パートナーの再感染を防ぐ方法
再感染を防ぐためには、以下のことが大切です。
・自覚症状がなくても検査を行いましょう。ピンポン感染を防ぐために必要なことです。
・治療中・治療後の一定期間は性交渉を控えましょう。
・定期的な検査を受けましょう。感染の早期発見を行い、知らぬ間に感染を広めないように、定期検査は大事です。
◎カップルでの治療とフォローアップ
検査の結果、陽性が確認された場合はパートナーと一緒に治療を受けましょう。
二人とも感染していた場合どちらか一方だけの治療では、再び性行為を行えばまた感染してしまいます。
残存トリコモナス原虫が月経血中で増えるため、治療後の次回月経後に再度検査を行うことが推奨されています。男性の場合は明確な基準はありませんが、症状が続いている場合は受診して、再評価が必要です。
黄緑おりもの・膿が出たらまずは冷静に確認を
黄緑色のおりものや膿のような分泌物が見られた場合は、トリコモナス感染症の可能性があります。驚かずに冷静に状態を確認し、早めに検査を受けましょう。症状を放置すると悪化することもあるため、早期発見・早期治療が大切です。
◎受診のハードルを下げるためにできること
体調の異変に気づいたとき、正しい知識を得ることが安心に繋がります。
いきなり病院を受診することに抵抗を感じる人は、まず非対面の郵送検査を受けることも選択肢のひとつでしょう。
女性専用外来や、プライバシーに配慮したクリニックを選んだり、事前に電話やネットで相談できる医療機関を活用するのもおすすめです。
◎女性の健康を守るために
女性の体調不良は妊娠や出産と深く関わることがあり、将来的に子どもを望む場合、感染症は大きなリスクとなり得ます。
正しい知識を得て、早期に治療を開始することが、安心と健康を守るための第一歩です。
ただし感染者の20〜50%が無症状であるともいわれます
性行為だけでなく汚染されたタオルや便座からも感染するため定期的な検査を行うようにしましょう