GME医学検査研究所

おりものがいつもと違うのは性病だから?
色や状態の変化でわかるカラダの調子

おりものが多い、粘り気がある、ニオイがする…などいつもと違った時

女性のカラダ特有の分泌物である『おりもの』。いつもは気にしていなくても、違いがあった時にはすぐに気がつく方も多いはず。おりものの状態は月経周期などでも変化が起こりますが、時には性感染症を引き起こしている場合もあります。正常な状態を知って、自身のカラダの調子を把握できるようにしましょう。

おりものとは?

おりものとは、子宮頸管やバルトリン腺(膣の入り口部分の左右に存在する分泌腺)からの分泌物のことであり、医学的には「帯下(たいげ)」といいます。腟の中を酸性にして適度な潤いをもたせることで、外敵の侵入を防ぐ自浄作用や、性交渉の準備をしたり、受精の際に精子が子宮内に侵入することを助けたりするはたらきがあります。
そのため、正常に分泌されるおりものは生理的な現象であり、月経のある女性にとっては必要不可欠なのです。[※1]

個人差はありますが、おりものの正常な色として透明に近いか白っぽい色をしていて、卵白のような伸びがあります。下着などについて乾くと薄黄色に変化します。においは無臭あるいは かすかに酸っぱさがある場合が多く、これはデーデルライン桿菌という善玉の乳酸菌によるものです。[※2]

また、おりものの状態は月経周期により変化します。排卵前に、性周期に関わる女性ホルモンのエストロゲン濃度が高くなると、子宮頸部が刺激されて分泌物が生じ、いつもより量が多くなったりサラサラとした状態となります。[※3]

おりものの色や状態ごとの解説

おりものに症状が出やすい性病

◎膣トリコモナス症

膣トリコモナス症は、トリコモナス原虫[Trichomonas vaginalis]による感染症で、主に女性では腟炎を引き起こし、男性では尿道炎や前立腺炎を引き起こします。
トリコモナス原虫による感染症は、最もポピュラーな性感染症として古くから知られています。地域によって感染率の差が大きく、近年、日本では減少傾向にありますが、再発を繰り返す難治症例も少なくありません。
腟トリコモナス症は、感染者の年齢層が他の性感染症と比べて非常に幅が広く、中高年者の感染者もしばしば見られます。

〈感染経路〉

トリコモナスは、主に性行為によって感染します。女性はトリコモナスに感染している男性との性交渉、あるいは下着やタオル、浴槽を通じて感染しますが、男性は通常、トリコモナスに感染している女性から感染します。

〈症状〉

女性では、泡状で悪臭を伴うおりものを始めとして、外陰部のただれや強い痒み・灼熱感の症状が現れます。感染していても20~50%が無症状といわれていますが、症状のある場合だと男性よりも強く様々な症状が現れるのが特徴です。
また、男性では尿道からの分泌物、かゆみや灼熱感・違和感を感じたり、排尿時に痛むといった尿道炎の症状がみられます。ですが一般的に無症状であることが多いことが特徴です。

◎性器カンジダ症

性器カンジダ症は、カンジダとよばれるカビの一種が性器に感染して生じる感染症です。女性の場合、腟炎・外陰炎を発症します。男性の場合は、罹患例は少ないものの、主に亀頭包皮炎を引き起こします。
カンジダは、もともと常在菌(性器周辺や口腔内、その他の体表に存在している菌)であるため通常は増殖しませんが、抗生物質の服用や体調の悪化などで免疫力が低下すると増殖して炎症を起こします。
女性の性器カンジダ症の約5%が性交渉による感染が原因であるといわれています。

〈原因〉

性器カンジダ症は、次のような原因で発症します。
適切な治療を行えば短期間で治癒しますが、発症原因となる生活習慣を持っている人は再発を繰り返しやすい傾向にあり、慢性化する場合があります。

・体調不良、ストレス

体力・免疫力の低下により菌に対する抵抗力が弱くなると、カンジダが異常増殖します。

・月経前、妊娠中、ピルの服用

ホルモンバランスの変化により腟内が酸性に傾きやすくなると、カンジダが異常増殖する場合があります。

・抗生物質の服用

抗生物質によって腟内に定住している常在菌が死滅すると、腟内の正常な状態における微生物集団のバランスが崩れ、真菌であるカンジダが異常増殖する場合があります。

・通気性の悪い下着、衣類の着用等による陰部の蒸れ

適度に温かく湿気の多い環境は、カンジダにとって条件の良い増殖場所となります。

・性交渉によるパートナーからの感染

パートナーの性器でカンジダが増殖していると、性交渉を通じて感染する場合があります。ただし、女性から男性へ感染する可能性は低いといわれています。

・その他

ステロイド剤や抗癌剤などの薬剤投与、糖尿病などが原因となる場合があります。

〈症状〉

女性でみられる主な症状は、白色で酒粕状・粥状・ヨーグルト状のおりものの増加を始めとして、外陰部や膣のかゆみ・痛み・灼熱感、性交痛や排尿障害があげられます。
男性では、カンジダを保有していても症状として現れることは少ないです。現れる症状としては、亀頭のかゆみや赤み・白色の分泌物があります。

細菌性膣症

細菌性膣症とは、女性の膣の常在菌のうち75~95%を占める乳酸桿菌が何らかの原因によって減少し、様々な好気性菌(酸素があると増殖できる菌)や嫌気性菌(酸素があると増殖できない菌)が異常に増殖することで、常在細菌のバランスが崩れた状態のことをいいます。
乳酸桿菌は、グリコーゲンを分解して乳酸を生み出して腟内をpH4.5以下の酸性の環境を保つことで、感染症の原因となる雑菌の侵入や増殖を防ぐ役割を担っています。
膣に炎症が起こる疾患の中で、上記で解説したトリコモナスやカンジダなどといった特定の原因微生物が検出されないものを細菌性膣症とよびます。

〈原因〉

・体調不良、過労、ストレス

体力・免疫力が低下すると、細菌性腟症になりやすくなります。

・性交渉のパートナーが複数いる、パートナーが新しく変わる

不特定多数の人と性行為を行うと、リスクが高くなります。

〈症状〉

症状としては、灰色または白色でサラサラとしたおりものから生臭い匂いがします。量はそれほど多くはありません。しかし、約半数は無症状であるため、発症していることに気づかないこともあります。

おりものを正常な状態にするために

おりものを正常な状態を保つためには、膣周辺の衛生を常日頃から保つことが大切です。
膣洗浄剤やデオドラントスプレーなどの使用は膣の常在細菌叢のバランスを乱す可能性があるため、過剰な洗浄や刺激を避けて必要な場合に使用するようにしましょう。

性行為を行う際は、雑菌が入らないようにすることが大切です。特に、男性側の配慮が必要となってきます。
汚い手で腟に触れたり、口腔内が汚れたままオーラルセックスを行ったりすると、発症リスクが高まります。性行為を行う前に手洗いや歯磨きなどを徹底しましょう。

妊娠を希望しない場合は必ずコンドームを使用し、アルカリ性の精液を腟内に入れないようにしましょう。

他にも、不特定多数の人と性行為をしないなど、セックスの在り方を見直すことで細菌性腟症のリスクを低減させることができます。
自己判断で抗真菌薬や抗生物質を使用することも避けるべきです。必要な場合は医師の指示に従って使用しましょう。

おりものについて
外敵の侵入を防ぐ自浄作用や、受精の際に精子が子宮内に侵入することを助けたりする、大切なはたらきをする『おりもの』
色や質感、ニオイなどがいつもと違った場合には、検査を受けてみることをおすすめします